- がん保険の自由診療は必要あるのか?
- そもそも自由診療って具体的に何?
- がん保険ではどこまで備えることができる?
がん保険を活用するとご自身で判断され、必要最低限の保障を選び始めている方の中には「今度は自由診療って言葉が出てきたけど、これも必要なの?」と困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私は薬剤師とFP3級の資格取得を経て、医療全般に関する基本的な情報収集やその解釈、および医療保険などの仕組みや備えるべき状況など、一般的・客観的な立場での判断や考え方を情報共有させていただけるのではないかと考え、情報発信を始めました。
この記事では、自由診療に対してがん保険でどこまで保障できるのか、必要最低限の保障内容は何なのか、そして、自由診療に対して『保険』で備える際におさえておきたい点について解説しています。
この記事を読めば、自由診療に対する備えの必要性、および『保険』で対応しきれない部分について理解した上で、必要最低限の保障をご自身で判断できるようになります。
本記事の結論といたしましては、
必要最低限の保障は、『先進医療・患者申出療養特約』、『自由診療抗がん剤治療給付金』、『自由診療特約』です。
必要最低限の保障:『先進医療・患者申出療養特約』、『自由診療抗がん剤治療給付金』、『自由診療特約』
がん治療という分野における“保険診療”において、必要最低限の保障は『抗がん剤治療給付金』であるということを以下の記事で解説してきました。
今回は“自由診療”編ということで、早速結論になりますが、
以下を必要最低限の保障に含めましょう。
- 先進医療・患者申出療養特約
- 自由診療抗がん剤治療給付金
(薬機法上未承認の抗がん剤の使用、適用外使用) - 自由診療特約
(評価療養、薬機法承認後で保険収載前の抗がん剤の使用)
薬機法 (医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
規制対象:医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品
目的 :品質、有効性、安全性を確保することなどにより保健衛生の向上を図ること
【必要最低限の選び方】がん保険で本当に必要な保障内容が分かる
ポイントは以下のとおりです。
- 公的医療保険は自由診療に対する『保険』となり得ないため。
- 『保険』として備える手段は、民間がん保険のみであるため。
- 民間がん保険によって備える対象は、
国内外において一定の評価を受けている一方で、有効性や安全性の確認が現時点において十分でないものであるため。
それではこれらのポイントをベースに自由診療に備える際の考え方について見ていきましょう。
なお、がん保険の必要性については、こちらをご参照ください。
がん保険の必要性と、活用の余地がある判断ポイントについて解説しています。
【がん保険は本当に不要?】必要性と活用できる3つの判断ポイント
公的医療保険:制度の趣旨より自由診療は対象外となる
公的医療保険は、その制度の趣旨により、基本的に自由診療に対して備えることができません。
その理由は、
限られている財源を科学的根拠が確立されていない医療行為に対して給付することは適正とは言えないためです。
それでは、公的医療保険制度の趣旨や対象外となってしまう点を細かく見ていきましょう。
公的医療保険制度の趣旨
公的医療保険の趣旨は、『科学的根拠に基づいた一定の有効性と安全性が再現可能であると国が判断した医療に対して、限られた財源を適正に配分することで、国民のだれもが平等かつ必要十分な医療を受けられるようにすること』と捉えることができます。
必要最低限のがん保険の選び方でも触れましたが、手厚い保障内容となっている公的医療保険ですが、厚生労働省保険局では以下のように表現しております。
- 保険適用となるのは、治療の有効性・安全性が確認された医療である。
- 我が国の医療保険制度は公費、保険料を財源として成り立っていることから、保険給付の範囲の適正化等を図る必要がある。
厚生労働省提出資料 厚生労働省保険局 より引用
このことから
限られた財源は『科学的根拠に基づき一般的な臨床条件下でも一定の有効性と安全性が再現可能であると国が判断した医療』=『保険診療』に対して配分されることになります。
自由診療は適正な保険給付の範囲外
自由診療は標準治療(最良の治療)が奏功しなかった場合に検討候補に挙がってくるかと思います。そのため、必要とする可能性は一般的に低いと考えられますが、必要となればそのすべてが自費となり金額は相当に大きいものとなることから、
自由診療は保険で備えるべき対象である『確率低・損失大』に当てはまる事例と考えられます。
しかしながら、自由診療は、基本的に公的医療保険の適用を目指す医療行為であり、一定の評価を受けている一方で有効性や安全性の確認が十分でないものを指すことから、
保険適用の範囲を超えているため適正な保険給付の範囲外との判断になります。
自由診療については、「備えたい対象だが公的医療保険制度が成り立たない」という『保険の原則』の例外に当てはまる事例と考えることができます。
以上のことから、
公的医療保険はその制度の趣旨から基本的に自由診療に対する金銭的な備えとはなり得ません。
なお、保険で備えるべき対象や、保険の基本的な考え方などについては以下をご参照ください。
『保険の原則』や難しい保険選びのポイントをシンプルに解説しています。
【難しい保険の選び方】保険の5つの原則と保険選びに役立つ2つのポイント
民間がん保険:唯一の備える手段だけど、前提をおさえておきましょう
公的医療保険では備えることができないがん治療における自由診療に対しては、
民間がん保険が唯一の手段となりますが、おさえておきたい前提があります。
- 民間保険会社は営利企業であり、会社存続のため利益を求めるものであること。
- 原則的に民間保険会社より財源豊富の公的医療保険で成立し得ない自由診療に対する保険商品が成立しているのは、
保障要件に該当する事例が少ないことによる。
それでは一つずつ見ていきましょう。
①営利企業であり会社存続のため利益を求める
公的医療保険との大きな違いは、民間保険会社は前提として営利企業であることです。
利益をどのくらい求めるか各社の方針にも寄りますが、確実なのは利益を求める分でますます財源は限られます。そのため、保険商品の保障範囲は公的保険と同様に、基本的には保険診療がメインとなります。
②民間保険会社の保険商品が成立し得るのは、保障要件に該当する事例が少ないため
自由診療に対する備えの唯一の方法となる民間がん保険が成立しているのは、
実際に保障要件に該当し保障金を支払う事例が少ないためです。
例えば先進医療は、公的医療保険の適用を目指す医療行為で、一定の評価を受けている一方で有効性や安全性の確認が十分でないものを指します。
- 先進医療の実績(先進医療Aと先進医療Bの合計)
2019年~2023年までの過去5年間の年間平均患者数が4万5,000人
- 保険診療患者数
2025年5月の1日平均患者数入院111万人・外来114万人より、
1カ月平均患者数が4500万人
1カ月の保険診療の患者数と比較しても0.1 %程度となり、治療を受けることができる確率は低いと考えられます。
なお、参考までに治療費については、数十万から数百万円、場合によっては900万円を超えるケースもあります。(先進医療とは?どれくらい費用がかかる? 公益財団法人 生命保険文化センター 参照)
前述のとおり『確率低・損失大』の事例となりますが、
『確率低』については、事例(標準治療が奏功しなかった事例)の純粋な発生確率が低いことに加え、
「要件・審査のハードルが高い」「申請に時間を要する」「実施可能な医療機関が限られている」といった制約により先進医療を受けることができる該当者が絞られてしまうことに起因すると考えられます。
先進医療に申し込みを行ったが承認されず実施不可となった方がどのくらいいるのかという公式のデータは公表されておりませんが、
先進医療などの自由診療を受けることができず、結果として保険としての恩恵を受けられないままの方が存在していることが想定されます。
以上のことから、
民間保険会社のがん保険は、保険金を支払う事例が少ないため利益の取り分を考慮した上でも成立し得る、という点はおさえておきましょう。
自由診療(保険外診療)の備える範囲
ここまでにも先進医療について少し触れてきましたが、自由診療(保険外診療)の中でも備えるべきものと、そうでないものがあります。
まず、自由診療(保険外診療)についてですが、以下のとおりさまざまなものがあります。
| 種類 | 引用元 | |
|---|---|---|
| ①治験 | 評価療養 | 「治験とは」 厚生労働省 「保険外併用療養について」 国立保健医療科学院 |
| ②先進医療 | 評価療養 | 「先進医療の概要について」 厚生労働省 「保険外併用療養について」 国立保健医療科学院 |
| ③患者申出療養 | 「患者申出療養制度とは」 厚生労働省 「保険外併用療養について」 国立保健医療科学院 |
|
| ④日本国内の薬機法承認後で保険収載前の抗がん剤の使用 | 評価療養 | 「厚生労働大臣の定める評価療養とは」 厚生労働省 |
| ⑤薬機法上未承認の抗がん剤の使用 | 評価療養 | 「未承認薬・適用外薬」 がん治療.com |
| ⑥(保険収載)抗がん剤の適用外使用 | 評価療養 | |
| ⑦医療法に基づく自由診療、有償治験(樹状細胞ワクチン、丸山ワクチンなど) | 「がん免疫療法開発のガイダンスについて」 医薬品医療機器総合機構 | |
| 「丸山ワクチンは今」 日本医科大学ワクチン療法研究施設 江上格 | ||
| ⑧その他民間療法(温熱療法、高濃度ビタミンC療法など) | 「温熱療法」 産業医科大学病院放射線治療科 | |
それぞれに関する細かい内容については、
厚生労働省などの公式の情報をご参照いただければと思います。
厚生労働大臣の定める「評価療養」
「平成18年10月1日より、従前の特定療養費制度が見直しされ、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な「評価療養」と、特別の病室の提供など被保険者の選定に係る「選定療養」とに再編成されました。」
「療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については保険給付をし、特別料金部分については全額自己負担とすることによって患者の選択の幅を広げようとするものです。」
なお、筆者の身内のがん治療の中での実際の経験(試した自由診療や、自由診療の良し悪しを判断した方法、それにまつわる後悔、参考にしたツールやサイトなど)について、
同じような境遇の方々の治療方針の判断の一助となることを願いつつ、追って執筆できればと考えております。
これらの中からがん保険で備えることができるものを見ていきましょう。
備える対象:国内外において一定の評価を受けている一方で、有効性や安全性の確認が十分でないもの
備えることができる自由診療は、
②先進医療
③患者申出療養
④日本国内の薬機法承認後で保険収載前の抗がん剤の使用
⑤日本国内の薬機法上未承認の抗がん剤の使用
⑥保険収載の抗がん剤の適用外使用
となります。冒頭のポイントでもお伝えしたとおり、これらに共通するものとして
『国内外において一定の評価を受けている一方で、有効性や安全性の確認が十分でないもの』と捉えることができます。
すなわち備える対象は、標準治療(最良の治療)としての確立を期待されている自由診療(保険外診療)と言い換えることもできます。
備える対象外:その他民間療法
一方で、⑧のようなその他の自由診療、いわゆる民間療法については、がん保険で備える対象とはなりません。
なぜなら、
民間療法には法規制や明確な科学的根拠がないものが多く、それを受ける優先順位は非常に低いと考えられるためです。
残念ながら患者やそのご家族の気持ちを逆手に取った悪質なものも数多く存在し、
治療面・金銭面ともにハイリスクと言っても過言ではないと考えております。
なお、①治験は基本的には無償であり、
⑦の樹状細胞ワクチンや丸山ワクチンなどは、各種医療法に基づく医療であるため、法規制のない⑧その他民間療法と異なり、科学的根拠の蓄積を目的として実施されているものと捉えることができます。
しかしながら、その段階や程度は②~⑥には届いていないため、治療面での優先順位も決して高くはないとの判断から、がん保険で備える対象からは外れると考えられます。
当然ですが、温熱療法などの⑧その他民間療法を否定するつもりはなく、金銭的に余裕がありチャレンジしたいということであれば、主治医に了承を得た上でご実施いただければと思います。
特別費として積み立てることも併用
がん治療における自由診療に対するがん保険での備えについて解説してきましたが、
特別費として現金を少額でも積み立てておくことが推奨されます。
なぜなら、
必要最低限のがん保険だけでは対応しきれない部分が残ってしまうためです。
前述のとおり、がん保険で備える対象の②~⑥、および①治験も含め、共通している点の一つに、
手続きが煩雑であり、申請してから治療を受けることができるまで時間を要する場合が多いという点があります。
- 先進医療Bについて
「医療機関からの申請から先進医療として承認されるまでの期間は概ね6ヶ月が必要」
- 自由診療の手続きフロー(一部)
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そのため、標準治療が奏功せず一刻も早く次の治療に移りたいという気持ちの中で、
治療が始まるまでの待機時間に他にできることを何とか探し出し、主治医に相談・了承を得た上で実施することが実情かと思います。
また、
実施可能な医療機関が限られていることから、地方在住の方は首都圏の病院まで通院しなければならないケースも生じ得ます。
(なお、『保険の原則』の対象外であることから、通院費用に対するがん保険の必要性は低いと考えられます。【難しい保険の選び方】保険の5つの原則と保険選びに役立つ2つのポイント)
ここまでのお話から、『原則としてがん保険は不要である』という点にも繋がる部分ではありますが(【がん保険は本当に不要?】必要性と活用できる3つの判断ポイント)、
がん保険の活用をご自身で判断された場合においても、
がん保険では対応しきれない部分が残ってしまうため、
特別費としての現金積立を併用することが推奨されます。
まとめ
がん治療という分野の“自由診療”に対してがん保険で備える場合について解説してきました。
必要最低限の保障は、
- 先進医療・患者申出療養特約
- 自由診療抗がん剤治療給付金
(薬機法上未承認の抗がん剤の使用、適用外使用) - 自由診療特約
(評価療養、薬機法承認後で保険収載前の抗がん剤の使用)
となります。
また、考える上でのポイントや要点をまとめますと以下のとおりです。
- 公的医療保険
制度の趣旨により自由診療は対象外。 - 民間がん保険
・『保険』として備える唯一の手段。
・保険金を支払う事例が少ないため、営利企業としての利益の取り分を考慮した上でも成立し得る。 - 民間がん保険によって備える対象
国内外において一定の評価を受けている一方で、有効性や安全性の確認が現時点において十分でないものであり、以下のとおり。
・先進医療
・患者申出療養
・薬機法承認後で保険収載前の抗がん剤の使用
・薬機法上未承認の抗がん剤の使用
・保険収載の抗がん剤の適用外使用
- 特別費の積立を併用
がん保険では対応しきれない部分に対して、
特別費として現金を少額からでも積み立てる。
これからも皆さんの日々の生活が『より良く』なるような情報を発信していきます。
以上、ぐぅでした。
※本記事の画像はAI生成(Canva利用)です。



