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生命保険はいらない?公的保障で足りる部分と足りない3つの穴で判断する

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  • 毎月の保険料が負担になっているが、やめてよいのか判断できない
  • 「生命保険はいらない」という情報を見かけるが、自分にも当てはまるのか分からない
  • 公的保障で実際どこまでカバーされるのかを、具体的な金額で知りたい
  • 勧められるままに入った保障が、いまの自分に合っているか確かめたい

「生命保険はいらない」という情報を目にする機会が増えました。ただ、そこで語られているのは「多くの方にとってはいらない」というお話であって、ご自身に当てはまるかどうかまでは書かれていないことがほとんどかと思います。

保険料は、いちど決めると何十年も続く固定費になりえます。だからこそ、他の方の結論をそのまま受け取るのではなく、ご自身の状況で確かめておきたいところではないでしょうか。

私は薬剤師とFP3級の資格取得を経て、医療全般に関する基本的な情報収集やその解釈、および医療保険などの仕組みについて、中立的・客観的な立場での判断や考え方をお伝えできるのではないかと考え、情報発信を始めました。身近な家族をがんで見送った経験もあり、健康リスクの現実と、家計を圧迫する保険料の重さの両方に触れてまいりました。

はじめにお伝えしておきたいのですが、この記事は「生命保険はいらない」という結論をお渡しするものではありません。
ご自身でご判断いただけるような軸を整理した記事です。

そこでこの記事では、「いらない」と言われる4つの理由・公的保障が届く範囲を6つの制度で確認する・それでも埋まらない3つの穴・自分はどちらかを判断する5つの質問・保険の種類別の結論・やめる前に確認したいことの順に整理しました。

読み終えていただくと、「みんなが言っているから」でも「勧められたから」でもなく、ご自身の状況にあてはめて判断できる状態になるかと思います。

結論としては、生命保険は「公的保障と貯蓄では埋まらない穴」にだけ使う手段であり、その埋まらない穴がご自身にあるかどうかで、いる・いらないが決まると考えることができます。

お時間のない方へ|この記事の道すじ

・生命保険は「公的保障と貯蓄では埋まらない穴」にだけ使う手段です
・公的保障がどこまで届くかは、働き方によって変わります
・埋まらないのは3つの穴だけです
・ご自身に穴があるかどうかは、5つの質問で確かめられます

お急ぎの場合は、「3つの穴」と「5つの質問」だけでも判断の材料になるかと思います。

この記事の立場について

当サイトでは、保険商品や保険相談サービスの紹介・広告を一切掲載しておりません。特定の商品をおすすめすることも、いま加入されている契約の解約をおすすめすることもありませんので、その前提でお読みいただければと思います。

Contents
  1. なぜ「生命保険はいらない」と言われるのか|4つの理由
  2. 公的保障はどこまでカバーしているのか|6つの制度を金額で確認する
  3. それでも公的保障で埋まらない「3つの穴」
  4. 5つの質問で線を引く|自分の場合は「いる」のか「いらない」のか
  5. 種類別に見る|死亡保険・医療保険・がん保険・就業不能保険
  6. やめる前に確認したい5つのこと
  7. 保険料が減ったら、その分を何に回すか
  8. まとめ|「いらない」かどうかは、穴があるかどうかで決まります

なぜ「生命保険はいらない」と言われるのか|4つの理由

まず、なぜ「いらない」と言われるのかを整理しておきます。根拠を知らないまま結論だけを受け取ると、それがご自身に当てはまるかどうかを確かめようがないためです。

理由①:日本の公的保障が想像以上に手厚い

もっとも大きな理由がこれかと思います。私たちは公的医療保険と公的年金の保険料をすでに毎月支払っており、医療費が高額になったとき・働けなくなったとき・障害が残ったとき・亡くなったときのそれぞれに、公的な制度が用意されています。

これらを把握しないまま民間保険を検討すると、すでに公的制度でカバーされている部分に、重ねて保険料を払うことになりかねません。具体的な金額は次の章で確認していきます。

理由②:保険は「確率が低く・損失が大きい」ことにだけ使う手段である

保険は、大多数の方から集めた保険料を、不幸にも大きな損失が出てしまったごく一部の方の救済にあてる仕組みで成り立っています。この仕組みから考えると、保険が成立するのは起こる確率が低く、かつ起きたときの損失が貯蓄では支払いきれないほど大きい事象に限られる、と考えることができます。

保険と貯金の使い分け

備え方の使い分け

・損失が小さく、起こる確率が高い → 貯金で備える(風邪、軽いケガなど)
・損失が小さく、起こる確率が低い → 貯金で備える(数日の入院など)
損失が大きく、起こる確率が低い → 保険で備える(火災、対人賠償、子育て期の死亡など)
・損失が大きく、起こる確率が高い → そもそも近寄らない

この考え方で見ると、数日から数週間の入院や、短期間の収入減は「損失が大きく確率が低い」には当てはまらないことが多く、貯蓄と公的保障で備えるほうが合理的と考えることができます。「いらない」と言われる根拠のひとつがここにあります。

保険の原則そのものについては、別の記事で詳しく整理しておりますので、あわせてご参照いただければと思います。

理由③:貯蓄型は「保険」と「運用」が混ざっていて判断しづらい

終身保険や養老保険のように、保障と積み立てが一体になった商品では、
保障と積み立ての両取りができるような感覚や、支払った保険料が戻ってくるという謳い文句から、一見するとお得に感じる方も多いかもしれません。
一方で、支払った保険料のうちどこまでが保障の対価で、どこからが積み立て部分なのかが、契約する側からは見えにくくなります。

そのため、支払っている保険料に対し、保障が適正な金額なのか、積み立て部分の増え方が妥当なのかを、それぞれ切り離して評価することが難しいという指摘があります。

保障は保障として、資産形成は資産形成として、分けて考えたほうが判断しやすくなる、という文脈で「いらない」と言われることがあります。

理由④:売る側と買う側のあいだに情報の差がある

保険は、加入する側が内容を完全に理解することが難しい商品です。
加えて、無料の保険相談の収益源は、相談にきた方が保険に加入したときに保険会社から支払われる販売手数料であることが一般的です。

この構造では、手数料の高い商品ほど提案する動機が強くなるという利益相反が生じ得ます。
融庁もこの点を構造的な課題として捉え、顧客本位の業務運営という観点から監督のあり方を見直しています。

https://www.fsa.go.jp/policy/kokyakuhoni/kokyakuhoni.html
(出典:金融庁「顧客本位の業務運営」)

「無料だから中立」とは限らない、という前提は押さえておいていただければと思います。

4つの理由を、どう受け止めるか

ここまでの4つは、いずれも事実にもとづいた指摘かと思います。
ただ、そこから「だから誰にとってもいらない」と進んでしまうと、行き過ぎてしまうおそれがあります。

4つの理由が意味していること

これらは「入りすぎていないかを疑う理由」であって、「やめてよい理由」そのものではないと考えることができます。

やめてよいかどうかは、公的保障がご自身の場合にどこまで届いていて、どこから届いていないのかを確かめてはじめて判断できます。

公的保障はどこまでカバーしているのか|6つの制度を金額で確認する

ここからが、この記事のいちばん大事なところです。「公的保障は手厚い」と言葉で言われても判断はできませんので、具体的な金額で見ていきます。

①医療費が高くなったとき:高額療養費制度


ひと月の医療費(保険診療分)の自己負担額が上限を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。この制度は2026年8月診療分から見直されており、上限額の引き上げとあわせて、新たに「年間上限」が設けられました。

70歳未満の方の自己負担限度額は、以下のとおりです。

年収の目安 ひと月の上限額 多数回該当 年間の上限額
(8月〜翌年7月)
約1,160万円〜 270,300円+(医療費-901,000円)×1% 140,100円 1,680,000円
約770〜約1,160万円 179,100円+(医療費-597,000円)×1% 93,000円 1,110,000円
約370〜約770万円 85,800円+(医療費-286,000円)×1% 44,400円 530,000円
〜約370万円 61,500円 44,400円 530,000円
住民税非課税 36,900円 24,600円 290,000円

https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
(出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」2026年7月31日更新)

実際の金額にあてはめると、どうなるか

ここで注意していただきたいのが、表の式にある「医療費」は、窓口で支払う自己負担分ではなく、3割負担になる前の医療費の総額を指すという点です。

たとえば70歳未満で年収約370〜770万円の方が、ひと月に医療費100万円の治療を受けたとします。

85,800円+(1,000,000-286,000円)×1%
=85,800円+7,140円
=92,940円

窓口負担は3割の30万円ですが、高額療養費制度によって、最終的な自己負担は約9.3万円に収まります。
さらに医療費が大きくなると、式の「1%」の部分の費用が乗ってきます。

それでも医療費が1,000万円かかった場合で、ひと月の自己負担は約18万円です。医療費が10倍になっても自己負担は2倍に届きません。
保険診療である限り、自己負担の伸び方はきわめてゆるやかと考えることができます。

新しく設けられた「年間上限」が大きい

今回の見直しで新設されたのが年間上限です。1年間で自己負担が上限に達したあとは、その年はそれ以上支払う必要がなくなります。年収約370〜770万円の区分では53万円です。

ここでいう「年間」は、8月から翌年7月までを指します。
暦の1年でも、4月から始まる年度でもありませんので、この点はご注意いただければと思います。

高額療養費の年間上限

年間上限について、あわせて知っておきたい3点

・最初の対象期間は2026年8月から2027年7月までです。2026年7月以前にお支払いになった分は、この53万円には算入されません
ひと月の上限額も年間の上限額も、世帯ごとに見ます(70歳以上の方の外来のみ個人ごと)
・年間上限を超えた部分は、いったん医療機関の窓口でお支払いになったうえで、加入されている健康保険(保険者)から償還払いという形で支給されます

年間上限は、払わずに済むのではなく、払ってから戻ります

ひと月の上限額のほうは、入院と、同一の医療機関での外来であれば、窓口でのお支払いが上限額までにとどまる仕組みが用意されています。
一方で年間上限は、払わずに済むのではなく、払ってから戻るという順番になります。

家計の面では、戻ってくるまでの間の立て替えを見込んでおく必要がある、ということになるかと思います。

この仕組みが効いてくるのは、毎月の上限額には届かないけれど、治療が長く続くという状況です。厚生労働省の試算では、これまで多数回該当にならなかった方で年およそ4.3万円、極めて高額な医療を受けた方では年およそ23.7万円の負担が軽くなるとされています。

なお、過去12ヶ月に3回以上上限額に達した場合に4回目から上限が下がる「多数回該当」は、今回の見直しでも金額が据え置かれています。長期の治療になるほど、負担の伸び方はゆるやかになる設計と考えることができます。

ここまでの内容は、厚生労働省のリーフレットでもご確認いただけます。

https://www.mhlw.go.jp/content/001725284.pdf
(出典:厚生労働省「令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」リーフレット)

ご自身がどの区分に当たるかは、マイナポータル、資格確認書、限度額適用認定証などでご確認いただけます。

2027年8月からは、所得区分がさらに細かくなります

令和9年(2027年)8月からは、所得区分がさらに細かく分けられる予定です。現在ひとくくりになっている「約370〜約770万円」は、次の3つに分かれる予定とされています。

・約370〜約510万円 → 85,800円+(医療費-286,000円)×1%
・約510〜約650万円 → 98,100円+(医療費-327,000円)×1%
・約650〜約770万円 → 110,400円+(医療費-368,000円)×1%

年間(8月から翌年7月まで)の上限額53万円は、この3区分とも据え置きです。

年収が高めの方は上限が上がる方向ですので、見直しの際は最新の区分をご確認いただければと思います。

会社員の方は「付加給付」の確認を

大企業や公的機関などの健康保険組合では、高額療養費の上限額を支払ったあとに、さらに組合から払い戻される付加給付が用意されていることがあります。制度がある場合、ひと月の実質的な自己負担が2万円台に収まることもあります。

こちらは健康保険組合ごとに内容が異なり、ご自身で調べなければ分からない部分です。
勤務先の窓口や健康保険組合にご確認いただければと思います。

②働けなくなったとき:傷病手当金(会社員・公務員の方)


健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合)に加入されている方が、
仕事以外の原因による病気やケガで働けなくなったときに支給される制度です。

傷病手当金のきほん

・金額:支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額を平均した額を30日で割り、そのおよそ3分の2(健康保険の場合)
・期間:最長で通算1年6ヶ月
・開始:連続する3日間を休んだあと、4日目から

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
(出典:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」)

公務員の方の共済組合にも、同じ名前の傷病手当金があります。
「およそ3分の2」という考え方は同じですが、
もとになる日額の計算が「22分の1」と定められており、会社員の方(30分の1)より日額が高く出る形です。結核性の病気については、支給期間が3年間とされています。

https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000128
(出典:e-Gov法令検索「国家公務員共済組合法」第66条)

https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000152
(出典:e-Gov法令検索「地方公務員等共済組合法」第68条)

国家公務員・地方公務員のどちらも、法律の定めは同じ内容です。ただし加入されている共済組合によって運用が異なる場合がありますので、詳しくは組合にご確認いただければと思います。

ここは会社員・公務員の方と、自営業・フリーランスの方とで、いちばん差が出るところかと思います。

自営業・フリーランスの方はどうなるのかと言いますと、
国民健康保険の傷病手当金が任意給付という扱いで、行うかどうかは加入先の条例や規約の定めによります。
支給される前提では考えにくい一方、「必ずない」とも言い切れませんので、お住まいの市区町村や国民健康保険組合にご確認いただければと思います。

実際に傷病手当金を行っている国民健康保険組合もあります。
ただし、入院した場合に限る・支給日数に上限がある・日額が保険料の等級で決まるなど、内容は組合ごとに大きく異なります。
金額や期間を一般化してお伝えすることはできませんので、加入先の規約をご確認いただければと思います。

https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192
(出典:e-Gov法令検索「国民健康保険法」第58条第2項)

いずれにしても、会社員・公務員の方のように最長1年6ヶ月という制度が用意されているわけではありません。同じ「生命保険はいらない」という話でも、前提がまったく異なってきます。

③仕事中・通勤中の場合:労災保険


上の傷病手当金は「仕事以外の原因」で働けなくなったときの制度です。
では、仕事中のケガや、通勤の行き帰りでのケガはどうなるのかというと、こちらは健康保険ではなく労災保険(労働者災害補償保険)の対象になります。

同じ「働けなくなった」でも、原因によって使う制度が変わります。

労災保険の主な給付

療養(補償)等給付 → 治療費は自己負担なし(労災病院・労災指定医療機関の場合)
休業(補償)等給付 → 休業4日目から、給付基礎日額の60%。あわせて休業特別支給金20%が支給されるため、合計でおよそ80%
傷病(補償)等年金 → 療養開始後1年6ヶ月を過ぎても治らず、傷病等級に該当する場合に年金として支給
障害(補償)等給付遺族(補償)等給付 → 障害が残った場合、亡くなった場合

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000166858.html
(出典:厚生労働省「各労災保険給付の支給事由と内容について」)

これらは通勤災害も対象です。また、健康保険の傷病手当金が最長で通算1年6ヶ月で終わるのに対し、労災では1年6ヶ月を過ぎたところから傷病年金に切り替わる仕組みが用意されています。仕事や通勤が原因の場合は、長期化したときの受け皿があるという点が大きな違いです。

公務員の方は、労災保険ではなく「公務災害補償」です

労災保険法には、国の直営事業および官公署の事業には適用しないと定められています(第3条第2項)。そのため公務員の方は労災保険の対象ではありません。

かわりに、国家公務員は国家公務員災害補償法、地方公務員は地方公務員災害補償法にもとづく補償が用意されています。地方公務員については、地方公務員災害補償基金が地方公共団体に代わって補償を行う仕組みです。いずれも通勤による災害も対象とされています。

休業したときの水準は、休業補償が平均給与額の60%、これに休業援護金が20%で、合計しておよそ80%
労災保険の「休業(補償)等給付60%+休業特別支給金20%」と同じ水準です。

https://www.jinji.go.jp/seisaku/kinmu/saigaihoshou/simkumi-syurui.html
(出典:人事院「国家公務員災害補償制度について」)

https://www.chikousai.go.jp/gyoumu/siori/siori.pdf
(出典:地方公務員災害補償基金「災害補償のしおり 令和8年度版」)

なお、この80%という水準は休業補償の段階のお話です。1年6ヶ月を過ぎたあとの受け皿も、労災保険と同じ形で用意されています

公務員の方の「1年6ヶ月」から先

・療養を始めてから1年6ヶ月を過ぎても治らず、障害の程度が傷病等級に当たる状態が続くときは、労災保険と同じ名前の「傷病補償年金」に切り替わります
1年6ヶ月という区切りも、第1級から第3級までという等級の考え方も、労災保険と同じです
・年金の額は平均給与額の313日分・277日分・245日分(第1級・第2級・第3級)で、労災保険の日数と一致しています
・切り替わると休業補償と休業援護金は止まりますが、かわりに一時金と年金の上乗せが用意されています

https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000191
(出典:e-Gov法令検索「国家公務員災害補償法」第12条の2)

https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000121
(出典:e-Gov法令検索「地方公務員災害補償法」第28条の2)

※ 上乗せの部分の計算方法は制度ごとに違いますので、金額まで完全に同じというわけではありません。ここでは「1年6ヶ月のあとも、労災保険と同じ仕組みで年金に引き継がれる」という点をお伝えできればと思います。

制度の名前は違いますが、仕事中・通勤中に働けなくなったときの受け皿があるという点では、会社員の方と同じとお考えいただければと思います。

自営業・フリーランスの方も「特別加入」ができます

労災保険は雇われて働く方のための制度ですので、自営業・フリーランスの方は原則として対象外です。ただし、特別加入制度という仕組みが用意されており、ご自身で申し込むことで労災保険に加入できます。

令和6年(2024年)11月1日からは、業種や職種を問わずフリーランスの方が特別加入の対象となりました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/kanyu.html
(出典:厚生労働省「労災保険への特別加入」)

おおまかな中身は、以下のとおりです。

項目 内容
加入できる方 ①中小事業主等 ②一人親方等 ③特定作業従事者 ④海外派遣者
2024年11月1日からは、業務委託を受けているフリーランスが業種・職種を問わず対象
手続き 一人親方等は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて申し込みます
(個人で直接は加入できません)
保険料 給付基礎日額×365日×保険料率
給付基礎日額は3,500円〜25,000円の16段階から申請します
保険料の例 建設の事業(料率17/1000)=日額3,500円で年21,709円/日額25,000円で年155,125円
個人タクシー事業(同11/1000)=日額3,500円で年14,047円/日額25,000円で年100,375円
受けられる給付 療養・休業・障害・傷病・遺族・介護の各給付と特別支給金
休業は4日目から、給付基礎日額の60%+休業特別支給金20%で会社員・公務員の方と同じ
通勤災害 原則として対象。ただし個人タクシー業者・個人貨物運送業者、漁船による自営漁業者など、一部の区分は対象外
加入前のケガ・病気 特別加入の前に発症した傷病、加入前の原因による傷病は給付の対象外です
加入時の健康診断 粉じん作業3年以上、振動工具1年以上、鉛業務6ヶ月以上、有機溶剤業務6ヶ月以上の業務歴がある場合に必要。結果によっては加入が制限されます

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-6.pdf
(出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」)

加入は「起きる前」でなければ間に合いません

特別加入の承認は、申請の日の翌日から30日以内で希望する日からになります。そして加入する前に発症した傷病は、給付の対象になりません

給付基礎日額の変更にも、同じ考え方があてはまります。原則は3月2日から3月31日までに申請して、翌年度から変更という形です。労働保険の年度更新の期間中であれば、その年度に適用される給付基礎日額を変更することもできます。

ただし、いずれも災害が起きる前に申請することが前提です。申請書を出す前に災害が起きている場合、その年度の変更は認められないとされています。

自営業・フリーランスの方は、仕事中・通勤中のリスクについては、民間保険を検討する前に特別加入を確認していただく順番になるかと思います。

職場が原因と思われる精神疾患は、どちらになるのか

ここまで「仕事以外の原因なら傷病手当金、仕事中・通勤中なら労災保険」とお伝えしてきました。ただ、職場の環境が原因で精神疾患になった場合は、どちらに当たるのか判断しづらいかと思います。

先にお伝えしておきますと、これはご自身で決められるものではありません。順番に整理します。

職場が原因と思われるときの進め方(会社員の方

健康保険は、法律の目的規定で「業務災害以外」を対象とすると定められています(健康保険法第1条)
会社員の方の場合、業務上かどうかを判断するのは労働基準監督署です。判断の基準になるのは「心理的負荷による精神障害の認定基準」(令和5年9月1日改正)で、発病前のおおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷があったかを見ます

労災を請求している最中でも、傷病手当金の申請はできます
「労災の結論が出ていないから受理しない」という取り扱いは認められていません(厚生労働省の事務連絡)

健康保険の給付を受ける権利は2年で時効にかかります。傷病手当金は働けなかった日ごとに時効が進みますので、両方を並行して手続きしておくほうが安全です

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34888.html
(出典:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」)

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7655&dataType=1&pageNo=1
(出典:厚生労働省「労災保険給付の請求が行われている場合の健康保険の給付申請の取扱いについて」平成24年6月20日 事務連絡)

※ 上の進め方は、会社員の方(健康保険)を前提としたものです。公務員の方と自営業・フリーランスの方については、このあと整理します。

なお、認定基準の対象になるのは、うつ病などの精神障害です。認知症や頭部外傷による障害、アルコールや薬物による障害は対象から除かれています

心理的負荷の強さは、ご本人がどう受け止めたかではなく、同じ職種の方が一般的にどう受け止めるかという観点で評価されるとされています。

「自宅で発症したから労災にならない」ということはありません

ケガの場合は「そのとき仕事中だったか」を見ますが、ご病気の場合は見方が変わります。

厚生労働省は、業務上の病気とは「事業主の支配下にある状態において発症した疾病ではなく、支配下にある状態において有害因子にさらされたことによって発症した疾病」と説明しています。就業時間中に発症しても業務上の理由が認められなければ対象になりませんし、逆に就業時間外の発症であっても、仕事による要因で発症したと認められれば対象になります

精神疾患の認定基準も、要件は「発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷があったか」であって、発症した場所や時間帯は要件に入っていません

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001593398.pdf
(出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労災保険給付の概要」)

公務員の方・自営業の方は、判断する先が変わります

ここまでは会社員の方を前提にしたお話でした。公務員の方と、特別加入をされている自営業・フリーランスの方は、判断する先も、判断の基準も変わります

「仕事が原因か」を判断するのは誰か

会社員の方 → 労働基準監督署
国家公務員の方 → お勤め先の府省など(実施機関)。精神疾患の場合は人事院に協議することが定められています
地方公務員の方 → 地方公務員災害補償基金(都道府県・政令指定都市ごとに支部が置かれています)。精神疾患の場合は基金の理事長に協議されます
特別加入をされている自営業・フリーランスの方 → 労働基準監督署会社員の方と同じ窓口です)

国家公務員は人事院の「精神疾患等の公務上災害の認定について」、地方公務員は地方公務員災害補償基金の「精神疾患等の公務災害の認定について」という通知が使われます。

発病前のおおむね6ヶ月の負荷を見るという骨格は似ていますが、同じ基準ではありません。負荷を評価するための表も、時間外勤務の目安の置き方も異なります。

https://www.jinji.go.jp/seisaku/kisoku/tsuuchi/16_saigaihoshou/1611000_H20shokuho114.html
(出典:人事院「精神疾患等の公務上災害の認定について」平成20年4月1日職補―114)

https://www.chikousai.go.jp/reiki/pdf/h24ho61.pdf
(出典:地方公務員災害補償基金「精神疾患等の公務災害の認定について」平成24年3月16日地基補第61号)

特別加入をされている自営業・フリーランスの方は、請求先も判断する先も会社員の方と同じですが、判断の基準には違いがあります

そもそも会社員の方の場合は、労働契約にもとづいて事業主の支配下にあったかで、仕事中かどうかを見ます。厚生労働省は、これを次の3つに分けて説明しています。

会社員の方の「仕事中」の3つの形

職場で働いているとき → 所定労働時間内・残業時間内に事業場のなかで働いている場合。特段の事情がないかぎり業務災害と認められます
職場にいるが働いていないとき → 昼休みや就業の前後。私的な行為による災害は対象外ですが、施設や設備が原因の場合は対象になります
職場の外で働いているとき → 出張や社用での外出。事業主の命令を受けて仕事をしている間は、支配下にあるとされます

オフィスにいるかどうかで決まるわけではない、という点が要かと思います。在宅勤務についても、労働契約にもとづいて事業主の支配下にあることによって生じた災害は対象になると、厚生労働省のガイドラインに示されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001593398.pdf
(出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労災保険給付の概要」)

一方で特別加入をされている方は、業務の内容がご自身の判断で決まる場面が多いため、範囲を確定することが難しいと通達でも説明されています。そこで「仕事中かどうか」は、特別加入の申請書に書いた業務の範囲をもとに判断されることになっています。

なお「その仕事が原因かどうか」のほうは雇われている方の場合に準ずるとされていますので、精神疾患であれば、労災保険の認定基準に準じた見方がされることになります。

長時間労働を理由にする場合、記録が残りにくい働き方ほど不利になりやすくなります

病気について業務上かどうかを判断する際に就業時間を把握する場合は、客観的に就業したことが明らかな時間を就業時間とすることが通達で定められています。

自営業・フリーランスの方は勤怠の記録が残らないことも多いため、雇われている方より立証が難しくなりやすい点は、あらかじめ知っておいていただければと思います。

https://laws.e-gov.go.jp/law/330M50002000022
(出典:e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法施行規則」第46条の26)

https://www.mhlw.go.jp/content/001250005.pdf
(出典:厚生労働省労働基準局長「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等について」令和6年4月26日 基発0426第2号)

なお、公務員の方の共済組合について、「公務災害を請求している最中でも傷病手当金を申請できる」という取り扱いを明示したものは、確認できませんでした。

共済組合の傷病手当金(→「②働けなくなったとき:傷病手当金」へ)は、法律上「公務によらないで」病気やケガをした場合の給付とされており、共済組合が公務によるものかどうかを判断するときは補償の実施機関の意見を聴くことになっています。実際にどのように扱われるかは、ご所属の共済組合にご確認いただければと思います。

④障害が残ったとき:障害年金


病気やケガによって生活や仕事に長く制限が生じたとき、障害年金の対象になる可能性があります。がんや心疾患、精神疾患なども対象になり得ます。

会社員・公務員の方は障害厚生年金と障害基礎年金の2階建て、自営業の方は障害基礎年金のみという違いがあります。ここでも、お勤めの形によって届く高さが変わります。

受け取るための3つの要件

障害年金は、次の3つをすべて満たす場合に受け取ることができます。

障害年金の3つの要件

初診日の要件
その病気やケガで初めて医師の診療を受けた日に、国民年金または厚生年金保険に加入していること。この「初診日」がすべての起点になります

保険料の納付要件
これまで年金保険料をきちんと納めてきたかどうかを見る要件です。
次のどちらか一方を満たしていれば大丈夫です。
【原則】初診日の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除を受けた期間が、あわせて3分の2以上あること
【特例】原則を満たさない場合でも、初診日の時点で65歳未満で、初診日の前々月までの直近1年間に未納がなければ、要件を満たしたものとして扱われます

障害認定日の要件
初診日から1年6ヶ月を過ぎた日その期間内に症状が固定した場合はその日)に、障害等級に該当していること

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
(出典:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」)

※ 特例は当面の措置で、初診日が令和18年(2036年)3月末までの場合に使えます。

なお、障害認定日には等級に該当しなかった方でも、その後に症状が重くなり、65歳になる前に該当した場合は、あらためて請求できます(事後重症による請求)。ただしこの場合、受け取れるのは請求した月の翌月分からになります。

「1年6ヶ月」が2回出てくる意味

ここで個人的に注目していただきたいところがあります。
傷病手当金の「最長で通算1年6ヶ月」と、障害認定日の「初診日から1年6ヶ月」が、同じ長さで揃っているという点です。

これは、「傷病手当金が終わるころに、障害年金へ引き継ぐという設計になっている」と考えることができるのではないでしょうか。

ただし、障害等級に該当した場合のみになります。
障害等級に該当しない場合、収入を支えるものがなくなってしまうことになります。
この記事で後ほどお伝えする「穴②(働けない状態が続くとき)」は、まさにこの部分のことです。

金額の目安(令和8年度)

障害年金は、等級によって受け取れるものが変わります。
会社員・公務員の方は1階と2階の両方、自営業の方は1階のみになります。

等級 1階:障害基礎年金
自営業の方はここまで
2階:障害厚生年金
会社員・公務員の方
1級
(最も重い)
1,059,125円 + 子の加算
(月あたり約8.8万円)
報酬比例の年金額×1.25
+ 配偶者の加給年金額243,800円
2級 847,300円 + 子の加算
(月あたり約7.1万円)
報酬比例の年金額
+ 配偶者の加給年金額243,800円
3級 ありません 報酬比例の年金額
(最低保障額635,500円
=月あたり約5.3万円)
3級より軽い ありません 障害手当金(一時金)
報酬比例の年金額×2
(最低保障額1,271,000円)

子の加算は、1人目・2人目が各243,800円(月あたり約2.0万円)、3人目以降が各81,300円(月あたり約6,800円)です。
※ たとえば2級でお子さんが2人いらっしゃる場合、1階だけで年1,334,900円(月あたり約11.1万円)になります。お子さんが1人なら年1,091,100円(月あたり約9.1万円)、3人なら年1,416,200円(月あたり約11.8万円)です。
障害手当金は、初診日から5年以内に症状が固定した場合が対象です。

「報酬比例の年金額」とは

これまでの給与や賞与の額と、厚生年金保険に加入していた期間から計算される金額で、人によって異なります。加入期間が300月(25年)に満たない場合は、300月として計算されます。

3級の「最低保障額635,500円」は、計算した額がこれを下回るときに、この額まで引き上げられるという意味です。3級の方が一律にこの金額を受け取る、ということではありません。

ここでも会社員・公務員と自営業で違いがあります

金額よりも押さえておきたいのが、等級の範囲の違いです。

障害基礎年金には1級と2級しかありません。一方、障害厚生年金には3級があり、それより軽い場合の障害手当金も用意されています。

つまり、同じ状態でも、会社員・公務員の方は3級で受け取れるのに対し、自営業の方は対象にならないということが起こり得ます。

具体的には、「労働が著しい制限を受ける」という3級にあたる状態であっても、自営業の方は2級に届かなければ支給されません。会社員・公務員の方であれば、障害厚生年金の3級(令和8年度の最低保障額635,500円)が支給される状態です。

傷病手当金の有無と並んで、大きな差になるところかと思います。

なお、障害年金の等級は、身体障害者手帳の等級や、介護保険の要介護度とは別の基準で判定されます。手帳をお持ちだから障害年金が受けられる、あるいはその逆、という関係にはありませんので、その点はご注意いただければと思います。

「働いていたら受け取れない」とは限りません

よくある誤解として、働いていると障害年金は受け取れないというものがあります。

障害年金の認定基準には、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず」と書かれています。就労の状況だけで判断されるものではない、ということかと思います。

とくに働き方に配慮を受けながら就労されている場合は、そのことも含めて判断されます。あきらめる前に、一度ご相談いただく価値があるかと思います。

⑤亡くなったとき:遺族年金


亡くなった方に生計を維持されていたご家族に支給される制度です。こちらも公的年金の加入状況によって内容が変わります。

遺族年金の届く範囲(ご家族の状況で変わります)

・会社員・公務員の方が亡くなった場合 → 遺族厚生年金+遺族基礎年金(遺族基礎年金は、お子さんがいないご家庭では支給されません
・自営業の方が亡くなった場合 → 遺族基礎年金のみお子さんがいないご家庭では支給されません

金額の目安は以下のとおりです。
障害年金と同じく会社員・公務員の方は1階と2階の両方、自営業の方は1階のみになります。

なお遺族年金には障害年金のような等級はなく、受け取るご家族の状況によって金額が変わります。

受け取るご家族 1階:遺族基礎年金
自営業の方はここまで
2階:遺族厚生年金
会社員・公務員の方
配偶者+子1人 847,300円 + 子の加算
1,091,100円(月あたり約9.1万円
報酬比例部分の4分の3
配偶者+子2人 847,300円 + 子の加算
1,334,900円(月あたり約11.1万円
報酬比例部分の4分の3
配偶者+子3人 847,300円 + 子の加算
1,416,200円(月あたり約11.8万円
報酬比例部分の4分の3
子のいない配偶者 ありません 報酬比例部分の4分の3

子の加算額は1人目・2人目が各243,800円、3人目以降が各81,300円です。
※ここでいう「子」は、18歳になった年度の3月31日まで(「子」が障害等級1・2級の場合は20歳未満)が対象です。
※遺族厚生年金の「報酬比例部分」は、これまでの給与や賞与の額と厚生年金保険に加入していた期間から計算されます。加入期間が300月(25年)に満たない場合は、300月とみなして計算されます。

自営業の方で、お子さんがいらっしゃらないご家庭には、遺族年金の支給がありません
ここも大きく異なってくる部分かと思います。

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf
(出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」)

お子さんの年齢と、受け取る方によって変わります

表の※にあるとおり、お子さんが18歳になった年度末を超えると、1階の遺族基礎年金の支給は止まります。2階の遺族厚生年金だけが残る形になります。

また、遺族厚生年金を夫が受け取る場合には、亡くなった当時に55歳以上であることが要件で、支給が始まるのは60歳からです。妻が受け取る場合にはこの年齢要件がなく、同じ夫婦でも、どちらが亡くなるかで届く保障が変わります。

受け取れる金額はご自身の加入期間や報酬によって変わりますので、ねんきん定期便やねんきんネットでご自身の見込み額を確認していただくのが確実です。「いくら足りないか」を出すには、まずこの数字が要ります。

⑥失業したとき:雇用保険の失業給付(基本手当)


ここまでの5つは、病気やケガ・障害・死亡のときの制度でした。6つ目は、仕事を失ったときの制度です。

雇用保険の失業給付(基本手当)は、働ける状態にあって求職活動をしている方に支給される制度です。ハローワークの説明では、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない『失業の状態』にあること」が要件とされています。

裏を返すと、病気やケガですぐには働けない状態のときは、受け取ることができないと考えることができます。この点は、あとの「3つの穴」であらためて触れさせていただきます。

なお、自営業・フリーランスの方は、雇用保険に加入していません
雇用保険法で、被保険者は「適用事業に雇用される労働者」と定められているためです(第4条第1項)。この場合の考え方も、「3つの穴」でお伝えします。

金額と期間の目安は、以下のとおりです。

基本手当のきほん

・金額:
離職前の賃金(賃金日額)のおよそ5〜8割賃金が低い方ほど割合が高くなる仕組みです(60歳以上65歳未満は45〜80%)
・1日あたりの上限額(2026年8月1日から):
30歳未満 7,450円/30〜45歳 8,270円/45〜60歳 9,110円/60〜65歳 7,830円。下限額は2,562円
・受け取れる日数:
自己都合や定年などは90〜150日、倒産・解雇などは90〜330日(被保険者であった期間と年齢によります)
・支給が始まるまで:
求職の申込みのあと通算7日間は支給されません(待期)。自己都合の場合はさらに給付制限があり、2025年4月1日以降に離職された方は原則1ヶ月です

https://www.mhlw.go.jp/content/11607000/001729233.pdf
(出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」令和8年7月31日 報道発表)

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
(出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」)

※ 傷病手当金の「およそ3分の2」とは計算の仕方が異なります。基本手当は賃金が低い方ほど割合が高くなる形ですので、同じ割合で置き換えて考えないほうが安全です。

そのうえで、雇用保険には働けない状況に応じ次の2つの仕組みが用意されています。ただし、この2つは役割がまったく異なりますので、分けて理解していただければと思います。

分かれ目は「いつ働けなくなったか」です。
・離職する時点ですでに働けない → ①受給期間の延長(期限が延びるのみ)
・求職活動を始めたあとに働けなくなった → ②雇用保険の傷病手当(お金が出ます)

①受給期間の延長 = 「原則1年以内に受け取り終える」を後ろにずらす仕組みです

失業給付(基本手当)は、原則として離職日の翌日から1年以内に受け取り終える必要があります。病気で動けないまま1年が過ぎると、一度も受け取らないまま権利がなくなってしまいます

そこで、30日以上引き続き働けないときに申請しておくと、働けない日数の分だけ期限が延びます(延ばせるのは最大3年)。

延長している間に基本手当が支払われるわけではありません。働けるようになってから受け取れるよう、権利を保管しておく仕組みとお考えいただければと思います。

手続きには「受給期間延長申請書」傷病証明書などの医師の証明が必要とされています。

②雇用保険の傷病手当 = 求職の申込みをしたあとに病気になった場合です

ハローワークで求職の申込みをしたあとに病気やケガで働けなくなった場合は、扱いが変わります。

・14日以内に働けるようになった → 基本手当が支給されます
・15日以上引き続き働けない → 基本手当のかわりに、同額の傷病手当が支給されます
・30日以上引き続き働けない → 傷病手当を受けずに、受給期間の延長を選ぶこともできます

こちらは健康保険の傷病手当金とは別の制度です。
なお、健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付を受けられる場合、雇用保険の傷病手当は支給されません

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
(出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)

公務員の方は、雇用保険の対象ではありません

ここまで雇用保険のお話をしてきましたが、
自営業・フリーランスの方と同様、公務員の方は雇用保険に加入していません

かわりに、退職手当の制度の中に「失業者の退職手当」という仕組みが用意されています。退職時に受け取った退職手当の額が、雇用保険の失業等給付に相当する額に満たない場合に、その差額が支給されるというものです。手続きはハローワークを通じて行います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00083.html
(出典:厚生労働省「政府職員失業者退職手当」について)

金額の考え方は、すでに受け取った退職手当の額雇用保険なら受け取れたはずの総額(基本手当の日額×所定給付日数)を比べる形です。
前者が少ない場合に、その差額が支給されます。1日あたりの水準は、雇用保険の基本手当と同じ計算ですので、上の金額の目安がそのまま当てはまります。

なお、退職手当の額を基本手当の日額で割った日数(待期日数)を超えて失業している分から支給される仕組みです。
病気などで30日以上働けない場合に期間を延ばせる点も、雇用保険と同じ形が用意されています。

※ こちらは国家公務員退職手当法の定めです。地方公務員の方は各自治体の条例で定められていますので、詳しくは退職された官公署とハローワークにご確認いただければと思います

あわせて知っておきたい:入院は思ったほど長くない

入院日額をいくらにするかで迷われる方が多いのですが、その前提として、実際の入院日数を見ておくと判断しやすくなります。

傷病 平均在院日数(35〜64歳)
悪性新生物(がん) 10.7日
心疾患 8.3日
脳血管疾患 44.5日
精神及び行動の障害 187.1日
全体 20.2日

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
(出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査」表6)

がんの入院が10.7日というのは、意外に感じられるかもしれません。治療の中心が通院での薬物療法に移ってきているためです。一方で脳血管疾患や精神疾患のように、長期化しやすい傷病もあります。

とくに精神疾患は、この表の中でいちばん長く(35〜64歳で187.1日)、働けない期間が長引きやすいことが読み取れます。
職場の環境が原因と思われる場合には、傷病手当金と労災のどちらになるのかという判断も必要になりますので、→ ③仕事中・通勤中の場合:労災保険 の「職場が原因と思われる精神疾患は、どちらになるのか」もあわせてご確認いただければと思います。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の調査でも、傷病手当金を受けている方の約4割(39.15%)が「精神及び行動の障害」で、傷病別でいちばん多くなっています。受け取っている期間も長めで、全体の平均が171.75日なのに対し、精神及び行動の障害は215.28日でした。

※ この調査は令和6年10月の時点で傷病手当金を受けていた方の状況を調べたもので、期間は「その時点までに受け取った日数」です。受け続けている方も含まれますので、「平均215日で復帰する」という意味ではない点にご留意いただければと思います。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/beneficiary_status_survey_r06_1-1.pdf
(出典:全国健康保険協会「現金給付受給者状況調査報告 令和6年度」第一部 傷病手当金)

入院日額として支給される民間保険を手厚くしても、日数が短ければ受け取れる額は限られます。
ここに高額療養費制度が重なりますので、当サイトでは入院日額や手術給付金を中心とした民間の医療保険は、原則として不要という整理をしております。

検討する余地がある場合については、のちほどあらためて触れさせていただきます。

ここから読み取れるのは、備えるべきは「入院の日数」よりも「治療が長引いたときに毎月出ていくお金と、減る収入」のほうではないか、ということかと思います。

働き方別の公的保障

この章の整理

医療費 → 高額療養費制度でひと月の上限が決まり、2026年8月からは年間の上限も設けられました

働けないとき → 会社員・公務員の方には傷病手当金。自営業の方の国民健康保険の任意給付はあるかどうかを要確認。
仕事中・通勤中であれば労災保険(公務員の方は公務災害補償)で、自営業・フリーランスの方も特別加入ができます1年6ヶ月を過ぎたあとは、どちらも「傷病補償年金」へ引き継がれます
職場が原因と思われる精神疾患は、会社員の方は労働基準監督署が判断します(国家公務員はお勤め先の実施機関、地方公務員は地方公務員災害補償基金)。労災を請求している最中でも傷病手当金は申請でき、時効は2年ですので、並行して手続きしておくほうが安全です

障害が残ったとき・亡くなったとき → 障害年金・遺族年金が、公的年金の加入状況に応じて支給されます
失業したとき → 雇用保険の失業給付。ただし働ける状態にあることが前提で、病気やケガで働けない間は受け取れません

・傷病手当金があるのは会社員・公務員の方で、障害年金の3級も会社員・公務員の方のみになります。自営業・フリーランスの方は、公的保障の届く高さが低くなります

公的保障は、思っていたよりも届きます。ただしどこまで届くかは、ご自身の働き方によって変わります

それでも公的保障で埋まらない「3つの穴」

ここまでを踏まえると、「では本当に何もいらないのか」という疑問が残るかと思います。公的保障は手厚い一方で、届かない部分もはっきりしています。その穴は、大きく3つと整理できます。

公的保障で埋まらない3つの穴

穴①:遺されたご家族の生活費


ご自身(生計を支える方)の収入が途切れると生活が成り立たなくなる方がいらっしゃる場合、これがいちばん大きな穴になります。

遺族年金は支給されますが、それまでの手取り収入を置き換えるほどの水準ではないことが一般的です。先ほどの例で言えば、お子さん2人のご家庭に届く遺族基礎年金は月あたり約11万円です。ここに遺族厚生年金が乗るかどうかで、家計の状況は大きく変わります。

とくに差が大きくなりやすいのは、次のようなご家庭です。

穴①が大きくなりやすいご家庭

お子さんが小さく、独立までの年数が長いご家庭
→ 生活費と教育費を負担する期間がそれだけ長くなります

配偶者の方の収入がご自身の収入より少ないご家庭、または単一所得のご家庭
→ 遺されたご家族の生活は「(配偶者の方の収入+)遺族年金」で成り立たせることになります。ご自身の収入が家計に占める割合が大きいほど、穴埋めしなければならない金額も大きくなります。共働きで収入が近かったご家庭では、残る収入がありますが、収入の差が大きいご家庭ほど、遺族年金だけでは届かない部分が広がります

自営業で、お子さんがいないご家庭
→ 遺族基礎年金の対象にならず、遺族厚生年金もありません

また、遺族基礎年金はお子さんが18歳になった年度末で終わりますので、
お子さんの独立と、配偶者の方の老齢年金が始まるまでのあいだに空白が生まれることがあります。ここも見落とされやすいところかと思います。

老齢年金は、原則として65歳から受け取る公的年金です。この記事では扱っておりませんが、「遺族年金が終わってから、老齢年金が始まるまで」の期間があるという点だけ、押さえていただければと思います。

この穴は「金額が大きく、起こる確率は低い」という保険の原則にきれいに当てはまります。この記事のなかで、保険が最も役に立つ場面と言えるかと思います。

穴②:働けない状態が長く続いたとき

傷病手当金は手厚い制度ですが、最長で通算1年6ヶ月という期間があります。そして先ほどお伝えしたとおり、その先は障害年金へ引き継がれる設計に見えます。

ふたつの1年6ヶ月という期間

問題は、障害等級に該当しなかった場合です。
働けない状態は続いているのに、傷病手当金は終わり、障害年金も受け取れないという期間が生まれますここが穴②です。

なお、仕事中や通勤中が原因の場合は、労災保険で1年6ヶ月のあとに傷病年金へ切り替わる道がありますので、
この穴が開くのは主に「仕事以外の原因で長期間働けなくなったとき」ということになります。

「働けないなら失業給付を受ければよい」とはならない

ここで誤解されやすいのが、雇用保険の失業給付(基本手当)です。

⑥でお伝えしたとおり、基本手当は「働ける状態にあって求職活動をしている方」に支給される制度です。そのため、病気やケガですぐには働けない状態のときは、受け取ることができません。退職すれば失業給付でつなげる、という想定は成り立たないことになります。

受給期間の延長を申請しても、延びるのは期限だけで、その間にお金が出るわけではありません
雇用保険の傷病手当についても、求職の申込みをしたあとに働けなくなった場合の制度ですので、離職の時点ですでに働けない方には当てはまりません

これらを踏まえると、会社員の方が長期間働けなくなったときの流れは、
健康保険の傷病手当金(最長1年6ヶ月)→ 障害等級に該当すれば障害年金/該当しなければ空白という形になります。雇用保険の失業給付(基本手当)はこの空白を埋めるものではない、という整理になるかと思います。

公務員の方の「失業者の退職手当」も、この穴は埋めません

⑥でお伝えした「失業者の退職手当」も、「失業していること」を前提とした制度です。病気やケガで働けない状態を支えるためのものではない、という点は雇用保険の失業給付と同じかと思います。

したがって、長期間働けなくなったときの流れは、公務員の方も会社員の方と同じとお考えいただければと思います。
共済組合の傷病手当金(最長1年6ヶ月)から、障害等級に該当すれば障害年金/該当しなければ空白、という形になります。

会社員・公務員の方も、原因によって受け皿が変わりますので、順番に整理しておきます。

会社員・公務員の方の考える順番

仕事中・通勤中が原因のとき → 労災保険(公務員の方は公務災害補償)でおよそ8割。1年6ヶ月を過ぎたところからは傷病年金へ引き継がれます。長期化したときの受け皿があります
仕事以外が原因のとき → 傷病手当金でおよそ3分の2を最長1年6ヶ月。その先は、障害等級に該当すれば障害年金、該当しなければ空白になります
→ 埋まらないのは②の「1年6ヶ月を過ぎて、障害等級に該当しなかったとき」だけです。民間保険を検討するとしたら、ここが対象になります

自営業・フリーランスの方は、出発点が変わります

自営業・フリーランスの方には、傷病手当金も雇用保険もありません(国民健康保険の任意給付があるか要確認)。仕事以外の原因で働けなくなった場合、流れはこうなります。

働けなくなったときの流れ

会社員・公務員の方
・傷病手当金(およそ3分の2・最長1年6ヶ月)
・→ 障害等級1級・2級・3級に該当すれば障害年金
・→ 該当しなければ空白

自営業・フリーランスの方
働けなくなった初日から収入なし
・→ 初診日から1年6ヶ月の障害認定日に、障害等級1級・2級に該当すれば障害基礎年金
・→ 該当しなければ空白

先ほどお伝えしたとおり、障害基礎年金には3級がありません。会社員・公務員の方であれば3級で受け取れる状態でも、対象にならないということが起こり得ます。

そのため、考える順番は次のようになるかと思います。

自営業・フリーランスの方の考える順番

仕事中・通勤中のリスクは、労災保険の特別加入で埋められないかを確認する
仕事以外の原因で働けない期間には公的な受け皿がほとんどないため、生活防衛費をどこまで厚く持てるかを考える
→ その上で、それでも埋まらない部分について、はじめて民間保険を検討する

会社員・公務員の方が「公的保障がどこまで届くか」から考えるのに対して、自営業・フリーランスの方は「公的保障がほとんど届かない前提で、どこまで自分で埋めるか」から考える形になります。同じ「生命保険はいらない」という話でも、出発点が違ってくるところかと思います。

穴③:公的医療保険の対象外になる出費


ここまでの穴①・穴②は公的年金や手当のお話でしたが、穴③だけは公的医療保険のお話になります。

高額療養費制度の対象になるのは、公的医療保険が使える診療の自己負担分です。
裏を返すと、公的医療保険の外にある費用は対象になりません。全額が自己負担になります。

高額療養費制度の対象にならない主な費用

差額ベッド代(個室などをご自身の希望で選んだ場合)
・通院にかかる交通費、遠方の病院へ通う場合の宿泊費
・入院中の食事代

先進医療にかかる費用や、患者申出療養の技術料
・保険が適用されない自由診療

このうち食費と居住費は、健康保険法で高額療養費の計算から外すと定められています。差額ベッド代や先進医療にかかる費用も、保険から給付される部分ではありませんので、同じく計算に入りません。

https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000070
(出典:e-Gov法令検索「健康保険法」第115条・第86条)

差額ベッド代と通院費は、保険よりも貯蓄で備える費用

ただし、この中には性質の異なるものが混ざっています

差額ベッド代や通院費は、金額としては貯蓄でまかなえる範囲に収まることが多く、なにより支払わなければ生活が破綻するという種類の出費ではありません

差額ベッド代については、患者さんへ請求してはならない場合という内容で国の通知が出ています。ここはご存じない方が多い部分かと思いますので、あげておきます。

差額ベッド代を支払わなくても良い場合

・患者本人の治療上の必要によって個室などに入院した場合(病状が重篤で安静を必要とする場合、感染症にかかるおそれがある場合など)
満床などの病棟管理の都合で、実質的にご自身が選んだとはいえない場合
料金を明示した文書に署名をして、同意を確認していない場合

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/15-3.pdf
(出典:厚生労働省保険局医療課長通知 保医発0327第6号「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等及び保険外併用療養費の支給対象となる療養に関する事項等の実施上の留意事項について」令和8年3月27日)

つまり差額ベッド代は、ご自身が個室などを希望されたときに発生する費用というのが本来の位置づけになります。

保険の原則で言えば「損失が大きい」に当たらない、いわば快適さのための費用ということになりますので、当サイトでは、こうした費用に保険で備えるのは基本的に避けたほうがよいと整理しております。

それでも検討する余地がある場合

もちろん、この点をご理解いただいたうえで、「差額ベッド代に対応できるだけの貯蓄の余裕はないけれど、そのためのわずかな保険料の上乗せであれば支払える」という方が、ご自身で判断して備えておくことは、ひとつの選択かと思います。

避けたいのは、この費用の性質を知らないまま、勧められるままに保障を足してしまうことです。

この整理の詳しい根拠は、別の記事でお伝えしております。

【がん保険は本当に不要?】必要性と活用できる3つの判断ポイント

先進医療・患者申出療養・自由診療は、性質がまったく異なります

同じ「対象外」でも、こちらは性質が異なり、金額も大きくなります。「快適さのための費用」ではなく、ほかに手立てがなくなったときに検討する治療だからです。

3つの違い(自己負担になる範囲)

先進医療 → 公的医療保険の対象にするかどうかを評価している段階の治療です。技術料は全額自己負担になりますが、診察・検査・入院といった部分には公的医療保険が使えます(保険外併用療養費制度)
患者申出療養 → 患者さんからの申し出をもとに、国内で未承認の薬などを使う制度です。こちらも技術料は全額自己負担で、それ以外の部分には公的医療保険が使えます(保険外併用療養費制度)
自由診療 → 保険外併用療養費制度の対象ではありませんので、技術料だけでなく、診察や検査も含めてすべてが全額自己負担になります

先進医療と患者申出療養が「保険外併用療養費」として扱われることは、健康保険法にも定められています(同法第86条)。自由診療がこの中に入っていないため、負担の重さがまったく変わってきます。

では、この部分にどう備えるか。当サイトでは、次のように整理しております。

先進医療・患者申出療養・自由診療への備え方

備えの対象になり得るもの → 先進医療・患者申出療養・薬機法の承認後で保険収載前の抗がん剤・薬機法上未承認の抗がん剤・保険収載されている抗がん剤の適用外使用(既存記事での整理と同じです)
備えの対象にしないもの → 温熱療法などの、その他の民間療法
先進医療・患者申出療養 → 民間の保険では、特約として用意されていることがあります
自由診療 → 公的な制度で埋まる見込みがなく、民間の保険以外に手立てを見つけにくい領域です。ただし自由診療のすべてが備えの対象になる、という意味ではありません(対象は、このあとでお伝えします)。
あわせてできる限り後悔の少ない選択をするために注意していただきたい点もありますので、下記の別記事もぜひご参考にしていただければと思います。

・どちらも「特別費」としてご自身で積み立てておくという考え方と併用できます

※ 特別費としての積み立てとは
不定期で変動する金額だがまとまった出費となる特別費(車の修理費や家具家電買い換え費、冠婚葬祭費など)に備え、あらかじめ毎月の生活費とは別に積み立てておくものです。
当サイトでは、保険で備えない部分に対しても、現金を少額からでも積み立てておくという意味で使っております。申請から実際に治療を受けられるまでに時間がかかることがあり、その間はご自身で立て替える場面もあるためです。

これらの中で備えるべき対象は、限られます
当サイトでは、国内外で一定の評価を受けている一方、有効性や安全性の確認が十分でないもの(未承認の抗がん剤を使う場合など)までを対象と考えており、温熱療法などのその他の民間療法は対象外としております。

民間療法そのものを否定するものではありません。ただ、保険やお金の備えをあらかじめ用意しておく対象としては、当サイトでは扱わないという整理です。実際に受けられるかどうかを検討される場合は、主治医の了解を得たうえでご判断いただければと思います。

そして、がん保険そのものは、当サイトでは原則として不要と整理しております

この章はあくまで、自由診療への備えを持っておきたいとご自身で判断された場合に、はじめて検討の対象になるという位置づけです。

根拠と、実際に選ぶ場合の考え方は、別の記事で詳しくお伝えしております。

なお、この3つはどなたにでも起こる出費ではありません標準治療(最良の治療)で奏功した方には、そもそも登場しない費用です。穴③の中でも性質の違うものとして分けて考えていただくのがよいかと思います。

3つの穴を、判断の入口にする

ここまでの整理

公的保障が届く範囲
・医療費
→ 医療費100万円でひと月約9.3万円、1,000万円でも約18万円。8月から翌年7月までで53万円で頭打ち(年収約370〜770万円の場合。超えた分は払ってから戻る形)
・働けないとき(仕事以外の原因)
→ 会社員・公務員は給与のおよそ3分の2を最長1年6ヶ月。自営業・フリーランスの方には、この受け皿がありません
・働けないとき(仕事中・通勤中)
→ 労災保険でおよそ80%。1年6ヶ月後は傷病年金へ。自営業・フリーランスの方も特別加入が可能
・障害が残ったとき
→ 障害年金。初診日から1年6ヶ月が認定日で、傷病手当金の終わりと入れ替わるように見える設計。障害基礎年金は令和8年度で2級が年額847,300円、1級が1,059,125円+子の加算。会社員・公務員にはこれに加えて障害厚生年金があり、3級と障害手当金も用意されています
・亡くなったとき
→ 遺族年金(お子さん2人なら遺族基礎年金で月あたり約11万円+遺族厚生年金)

公的保障で埋まらない3つの穴
・穴① 遺されたご家族の生活費(お子さんが小さい・収入の差が大きい・自営業で子がいない、ほど大きくなる)
・穴② 仕事以外の原因で働けない状態が1年6ヶ月を越えて続き、しかも障害等級に該当しなかったとき自営業・フリーランスの方は初日からで、しかも3級がないぶん空白になりやすい。失業給付も、公務員の失業者の退職手当も、この穴を埋めるものではありません
・穴③ 公的医療保険の対象外になる出費。ただし差額ベッド代などは快適さのための費用で、原則は貯蓄の範囲。先進医療・患者申出療養・自由診療は性格が異なります

この3つの穴が、ご自身にどれだけ当てはまるか。「生命保険はいらないのか」という問いは、突き詰めるとここに集約されるかと思います。

そして、同じ穴でも、会社員・公務員の方と自営業・フリーランスの方とでは深さが違います。次の章では、この違いも含めてご自身にあてはめていきます。

次の章では、この3つの穴を、ご自身にあてはめるための5つの質問に置き換えていきます。

5つの質問で線を引く|自分の場合は「いる」のか「いらない」のか

ここまでで、公的保障が届く範囲と、それでも埋まらない3つの穴を見てきました。
ここからは、それをご自身にあてはめていきます。

5つの質問で分かれる

次の5つの質問に、順番に答えてみてください。ご自身がどの穴を抱えているかを確かめるための質問です。

質問①:ご自身の収入が途切れたとき、生活に困るご家族の方はいらっしゃいますか

穴①(遺されたご家族の生活費)に対応する質問で、5つの中でいちばん大きな分かれ目になります。

いらっしゃらない(おひとりの方、共働きで配偶者の方が生活を支えられるご家庭など)
→ 死亡保障は原則として不要と考えることができます

いらっしゃる(配偶者の方やお子さんが、ご自身の収入で生活されている)
→ 穴①(遺されたご家族の生活費)があります。この記事の中で、保険がもっとも役に立つ場面です

なお、ご自身の葬儀にかかる費用を心配される方もいらっしゃいますが、こちらは金額としては貯蓄でまかなえる範囲に収まることが多く、保険で備える対象とは考えにくいところかと思います。

質問②:働き方は、会社員・公務員ですか。それとも自営業・フリーランスですか

穴②(働けない状態が長く続いたとき)の深さが、ここで大きく変わります。

会社員・公務員の方
→ 傷病手当金(およそ3分の2・最長1年6ヶ月)があり、その先も障害厚生年金の3級まで対象になります

自営業・フリーランスの方
→ 傷病手当金がなく、初日から収入が止まります。障害基礎年金は2級までしかありません

同じ「生命保険はいらない」という情報を見ても、この2つでは出発点が違います。

質問③:生活防衛費は、どれくらいありますか

ここは、金額で答えられる質問です。病気やケガで増える支出と、これまでどおり働けなくなることで減る収入の、両方を見ておく必要があります。
なお、一般的に、会社員・公務員であれば毎月の生活費×6ヶ月分自営業者・フリーランスであれば毎月の生活費×1〜2年分と言われております。

見ておきたい金額の目安(年収約370〜770万円の場合)

医療費として(高額療養費制度)
・保険診療であれば年53万円で頭打ちになります
・ただし年間上限の区切りは8月から翌年7月ですので、治療がこの境目をまたぐと、それぞれの年で上限に達することがあり得ます
・年間上限を超えた分は払ってから戻る形ですので、戻るまでの立て替え分も手元に必要です
・前述のとおり、差額ベッド代や通院費は、基本的には保険による備えでなく貯蓄での対応となるため、生活防衛費に含めるのも方法の一つです
・差額ベッド代の目安としては、1日あたりの平均徴収額が1人室で約8,700円、4人室で約2,900円、全体では約7,000円とされています(令和7年8月1日現在の推計)。ただし最も低いもので50円、最も高いもので385,000円と幅が大きく、医療機関によって異なります
・通院にかかる交通費は、通院先までの距離と通う回数で変わりますので、ご自身の通院先までの往復の費用から見積もっていただく形になるかと思います
・入院が何日になるかはご病気によって変わります。前半でお伝えした平均在院日数(35〜64歳で、がん10.7日・全体20.2日)と重ねて見積もっていただくと、規模がつかみやすいかと思います

https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001726223.pdf
(出典:中央社会保険医療協議会 総会(第653回)資料「主な選定療養に係る報告状況」令和8年7月22日)

収入の減少として
・会社員・公務員の方 → 傷病手当金はおよそ3分の2ですので、毎月の手取りのおよそ3分の1が減ります(最長1年6ヶ月)
・自営業・フリーランスの方 → 収入がそのまま止まります

・見落とされやすいのが、介護する側の収入です。
→ ご自身が介護を必要とする状態になると、収入のある配偶者の方が時短勤務に切り替える、休みが増える、働き続けられなくなるということが起こり得ます。つまり倒れた側の収入が減るだけでなく、支える側の収入も同時に減ることがあります。世帯としては二重に影響が出てくるところです

(収入のある配偶者の方が働けなくなった場合も、考え方は同じです。)

一般に生活防衛費は生活費の6〜12ヶ月分が目安とされますが、働き方、保険で備える対象外のものをどのくらい含めるか、によって変わってくることが分かるかと思います。

ここでいう「保険で備える対象外のもの」は、穴③でお伝えした差額ベッド代や通院にかかる費用です。金額としては貯蓄でまかなえる範囲に収まることが多く、当サイトでは保険ではなく貯蓄で対応する部分として整理しております。詳しい根拠は、穴③の章でお伝えしております。

医療費よりも、収入が減ることのほうが家計に響いてくるという点は、あらためて押さえておいていただければと思います。

質問④:勤務先の健康保険組合に「付加給付」はありますか


制度がある場合、ひと月の実質的な自己負担がさらに下がります。医療費の穴が、その分だけ小さくなります。

ご自身で調べないと分からない項目ですので、まだ確認されていない方は、この機会に勤務先の窓口や健康保険組合にご確認いただければと思います。

聞き方が分かりにくい項目かと思いますので、そのまま使える言い方をあげておきます。

問い合わせのときの言い方の例

(勤務先の担当部署に問い合わせる場合)
「うちの会社の健康保険の制度で『付加給付』という制度はありますか」

(健康保険組合に直接問い合わせる場合)
「当組合に『付加給付』の制度はありますか」

(共通)
「高額療養費の上限額を払ったあとに、さらに戻ってくる仕組みはありますか」
「ある場合、ひと月あたりの自己負担は最終的にいくらまで下がりますか
「申請は必要ですか。それとも自動で払い戻されますか
「払い戻しまでに、どれくらいの期間がかかりますか」

※ 制度の名前は健康保険組合によって異なり、「一部負担還元金」「family療養費付加金」などと呼ばれることもあります。「高額療養費の上限額を払ったあとに、さらに戻ってくる仕組みはありますか」と伺えば伝わるかと思います。

質問⑤:住宅ローンの団体信用生命保険に入っていらっしゃいますか

見落とされやすいのがこちらです。団体信用生命保険に加入している場合、契約者が亡くなったときには住宅ローンの残りがなくなります

つまり、遺されたご家族の生活費から、住居費の大きな部分が浮くということになります。必要な保障額を考えるときは、この分を差し引いて構いません。

すでに死亡保障を1つ持っている、と考えることができます。

ただし、団体信用生命保険は中身がひとつではありません

差し引ける金額は、ご自身の契約がどの形かで変わります。ここは確認していただく価値が高いところかと思います。

確認していただきたい3点

どこまで免除されるか
ローンが全額なくなる契約もあれば、残っている額の半分だけがなくなる契約もあります。

亡くなったとき以外も対象か
がんと診断されたときや、三大疾病にかかったときにも返済がなくなる契約があります。
ただし診断されただけで対象になるのか、入院や手術まで必要なのかは、契約によって異なります。

ペアローン・連帯債務ではないか
ご夫婦それぞれの名義で借りている場合、ご自身が亡くなってなくなるのは、ご自身の負担分だけです。配偶者の方の返済は残ります。

とくにがんと診断されたときに返済がなくなる契約にお入りの場合は、がん保険の検討にも関わってきます。

これらは契約ごとに内容が異なります。
すでにローンを組まれている方は、ご自身の契約書やローンの契約時の書類でご確認いただければと思います。

これから住宅ローンを検討される方は、間取りや設備などの打ち合わせ、変動金利か固定金利か、ペアローンにするか等、ほかにも考えることが多く、お忙しい時期かと思います。まずはがんと診断されたときなどの保障を付けるかどうかだけご検討いただき、がん保険との兼ね合いは、落ち着いてから見直していただく形でよいかと思います。

5つの答えは、3つの方向に分かれます

どのような整理になったでしょうか

「やめてよい」に近い方
・質問①が「いらっしゃらない」
・質問③で、生活防衛費が足りている
民間の医療保険・がん保険は原則として不要。死亡保障も、必要とする方がいらっしゃらなければ原則として不要と考えることができます

「減らす」に近い方
・質問①は「いらっしゃる」が、お子さんの独立が近い、または配偶者の方に安定した収入がある
・質問④で付加給付がある、質問⑤で団体信用生命保険に入っている
やめてしまうのではなく、保障額を下げる・期間を短くする・特約を外す、という方向が合いやすいかと思います

「残す」に近い方
・質問①が「いらっしゃる」で、お子さんがまだ小さい
・質問②が自営業・フリーランス
・質問③で、生活防衛費がまだ薄い
死亡保障を、掛け捨てで、必要な期間だけ持っておく価値が高い状況と考えることができます

※ こちらは一般的な整理であり、個別の状況に対する助言ではありません。実際の金額は、ご家族の人数・年齢・年収・貯蓄額・すでに加入されている契約によって変わります。記事の最後に、必要な保障額を概算するための無料ツールをご紹介しております。

種類別に見る|死亡保険・医療保険・がん保険・就業不能保険

方向が見えてきたところで、保険の種類ごとの考え方を整理しておきます。

死亡保険(掛け捨て)|この記事で唯一、残す価値が高いことが多い保険

穴①(遺されたご家族の生活費)に直接効くのがこちらです。掛け捨ての定期保険や収入保障保険が中心になります。

必要な保障額(遺されたご家族に必要な生活費・教育費)は、単純化すると次のように考えることができます。

必要な保障額の引き算

※ 「貯蓄」ではなく「すでにある備え」と表現しているのは、預貯金だけでなく、すでに加入済みの保険や、勤務先の団体保険・共済も同じように差し引く対象になるためです。
このあとの章(→ 質問④:付加給付)であらためてご確認いただければと思います。

期間は、お子さんが独立されるまでを目安に区切るのが基本かと思います。
終身にすると保険料が上がりやすく、必要のなくなった時期まで払い続けることになります。

教育費は、3つに分けて考える

教育費をひとまとめにすると、金額が大きく見えて、必要以上に不安に感じたり、必要な保障額も過大になりがちです。
性質の違う3つに分けていただくと、見積もりやすくなるかと思います。

教育費の3つの分け方

学費 → 保育園や学校へ支払う保育料、学習費用など、必ずかかる費用。公立・私立の違いや、大学時代は自宅通いか下宿か、などの進路を想定することで、おおよその金額が見えます。
塾・習い事の費用 → ご家庭の方針によって大きく変わります。必ずかかるとは限りません
食費・衣類などの生活費 → 教育費とは別に、毎月かかり続ける部分です。毎月の収入で賄えるかどうかをまず考える部分です。

文部科学省の調査で使われる「学習費総額」には、学費だけでなく塾・習い事の費用も含まれています。そのためここの総額だけを見て備えようとすると、ご家庭では選ばないかもしれない費用まで保険で持つことになりかねません。

死亡保障で備える教育費分は、必ずかかる部分を中心に。
ご家庭によって変わる部分(塾・習い事)は、生計を支える方が万が一の状況になったあとも続けるかどうかを、各ご家庭でご相談いただければと思います。

続ける場合は、毎月の塾・習い事の金額も含めた保障額に設定することになります。

金額の目安は、文部科学省の調査で確かめられます。塾や習い事にかかる費用(学校外活動費)は、公立の場合で小学校が年およそ25.6万円(月およそ2.1万円)、中学校が年およそ35.6万円(月およそ3.0万円)、高等学校が年およそ24.5万円(月およそ2.0万円)です。幼稚園は年およそ10.0万円(月およそ8,300円)で、学年が上がるほど増える傾向があります。

https://www.mext.go.jp/content/20260116-mxt_chousa01-000039333_1.pdf
(出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査結果のポイント」令和8年1月16日訂正版)

※ 月額は年額を12で割った当サイトの概算で、調査そのものに月額の記載はありません。

民間の医療保険|原則として不要

前述した内容のとおり、入院は思ったほど長くなく、そこに高額療養費制度が重なります。

当サイトでは以前から、民間保険は、公的医療保険を活用したうえで不足する部分を補うものという考え方でお伝えしてきました。保険診療である限り、ひと月の自己負担はおおむね9万円前後に収まりますので、その範囲を民間保険で二重に持つ意味は小さくなります

検討する余地があるとすれば、生活防衛費がまだ貯まっていない期間に限って、掛け捨てで最低限だけ持っておくという考え方かと思います。

では、その「最低限」はいくらなのか、以下をご参考にしていただければと思います。

「最低限」を考える際の優先順位

毎月の家計の収支から充当する優先順位として
生活防衛費の貯金
(会社員・公務員:毎月の生活費×6ヶ月分、自営業者・フリーランス:毎月の生活費×1〜2年分)
掛け捨て保険の保険料生活防衛費へ取り分けたあとの残った手持ち分で支払い可能な保険料まで

※ 生活防衛費への貯金が最優先のため、この最低限の保険で備える保障内容については、入院保障・手術保障がメインとなるかと思います。
※ 本来の保険の考え方(必要な保障額を見積もる → その額を保障できる分の保険料が決まる)とは例外的・暫定的に逆になります。

つまり、生活防衛費が積み上がるほど、必要な保障は小さくなっていきます。だからこそ「貯まるまでの期間に限って」という考え方になります。

がん保険|原則として不要。3条件に当てはまる場合のみ

がん保険についても、基本的な考え方は医療保険と同じです。ただし、ご自身の状況によってはピンポイントで活用する余地があります。当サイトでは、以下の3つを判断ポイントとして整理しております。

ある特定のがんを患ったご家族がいらっしゃる
小さなお子さんがいて、引き続き教育費の貯金が必要と見込まれる
「最低限の保障で加入し、不安を払拭できる」とご自身で判断できる

それぞれの根拠と、加入すると決めた場合の選び方については、別の記事で詳しくお伝えしております。

就業不能保険|給付の要件を先に確認する

穴②(働けない状態が長く続いたとき)に対応する商品として案内されるのが就業不能保険です。ただし、検討する前に給付の要件を確かめていただきたいと思います。

給付の要件は、商品によって異なります。「入院または医師の指示による在宅療養」に加えて、「国民年金の障害等級1級・2級」や「公的介護保険の要介護2以上」を要件とするものがあります。

どの要件が使われているかで、実際に受け取れるかどうかが変わってきますので、お申し込みの前に約款でご確認いただければと思います。

https://www.jili.or.jp/knows_learns/kind/main/8798.html
(出典:公益財団法人 生命保険文化センター「就業不能保障保険」)

ここで、前述した内容を思い出していただければと思います。

穴②を埋めたいのに、そこが保障されないことがあります

穴②(働けない状態が長く続いたとき)は、傷病手当金が終わったあと、障害等級に該当しなかったときに生まれるものでした。

ところが就業不能保険の給付の要件にも、同じ「国民年金の障害等級1級・2級」が使われていることがあります。

この場合、障害等級に該当しなかったために穴が開いたのに、同じ理由で就業不能保険からも支払われないということになります。穴を埋めるつもりで入った保険が、その穴では働かない形です。

もうひとつの要件「入院または医師の指示による在宅療養」に該当すれば給付されますが、こちらもほぼ終日にわたって自宅で療養している状態を指すことが多く、「働けない」という状態より一段厳しい条件という認識を持っていたほうが無難かもしれません。

では、この保険はどこで効いてくるのか

逆に言えば、給付の要件が障害等級や要介護度に紐づいているということは、
この保険が効いてくるのは、長く続く重い障害や要介護の状態だということになります。

この場面では、自営業・フリーランスの方であれば障害基礎年金、会社員・公務員の方であれば障害基礎年金+障害厚生年金が支給されています。
ですので就業不能保険は、障害年金の上に積む「公的保障だけでは足りない分の上乗せ」と捉えるのが、実態に近いかと思います。
就業不能の状態が60日続いてから給付されるタイプが一般的とされています。

ただし、14日や30日といった短い継続日数で給付されるものもあります。要件は商品によって様々ですので、「短い期間は対象外」と決めつけずに余裕があった際には一度ご確認いただければと思います。

https://www.jili.or.jp/knows_learns/kind/main/8798.html
(出典:公益財団法人 生命保険文化センター「就業不能保障保険」)

似たものに「所得補償保険」もあります

ここまでは生命保険会社が扱う就業不能保険のお話でした。これとは別に、損害保険会社が扱う所得補償保険という商品もあります。名前が似ていて混同しやすいところですので、簡単に整理しておきます。

項目 内容
何のための保険か ケガや病気によって就業不能となった場合の、所得の喪失を補償するもの
「就業不能」の意味 入院または医師の指示による自宅安静療養などで、その直接の結果として保険証券に記載されている業務にまったく従事できない状態
免責期間 保険金支払いの対象外とする日数。
補償はこの期間が終わった時点から始まります
(就業不能保険では「支払対象外期間」と呼ばれます)
てん補期間 免責期間が終了したあとに始まる、保険金が支払われる最長期間
設定の例 保険金額を月額10万円、免責期間を7日間、てん補期間を1年
に設定して契約する例が挙げられています
保険金額の上限 平均月間所得が保険金額より小さいときは、平均月間所得額が上限になります
(平均月間所得=免責期間の直前12ヶ月の所得の平均月額)
加入するとき 現在の健康状況などに関する告知書の提出を求められます。
告知の内容によっては、契約できない場合や、引受条件がつく場合があります
支払われない主な場合 8項目が挙げられており、精神障害によるものむち打ち症や腰痛などで
医師による他覚所見のないもの
が含まれます

日本損害保険協会の解説では、免責期間を7日間に設定した例が挙げられています。短い期間から対応できる余地があるのは、この点です。

「働けない」の判定に、契約時に届け出た業務が使われる点は、押さえておきたいところかと思います。同じ状態でも、どの業務を基準にするかで結論が変わり得るためです。

もうひとつ、保険金額の上限が「平均月間所得」までと決められている点も、この商品の性格をよく表しています。失った収入を超える金額は受け取れない、という設計です。

損害保険は、実際に生じた損失を埋めることを目的とした分野です。日本損害保険協会も、損害によって不当な利益を得ることを防ぐという考え方から、損害額に応じて支払う「実損払い」が基本と説明しています。

ただし、所得補償保険そのものの支払い方法は「定額払い」です。実際に減った収入を計算して支払うのではなく、契約で決めた月額を支払われ、そこに「平均月間所得を超えない」という頭打ちがかかるという形になっています。

保険期間についても、同協会は「損害保険の保険期間は1年とするものが一般的」と説明している一方で、所得補償保険については「保険期間を長期に設定できる商品もあります」と補足しています。1年ごとに見直す短期の設計が土台になっている分野、と受け取ることができるかもしれません。

https://soudanguide.sonpo.or.jp/basic/1_2.html
(出典:一般社団法人 日本損害保険協会「損害保険Q&A Ⅰ.損害保険について 解説②保険の分類と損害保険の種類」)

就業不能保険と所得補償保険

就業不能保険生命保険会社) → 給付の要件に障害等級1級・2級や要介護2以上が使われることがあり、重い状態が長く続いたときの上乗せという性格が強くなります
所得補償保険損害保険会社) → 保険証券に記載した業務に従事できない状態が要件で、保険金額は平均月間所得まで免責期間7日間という例も示されています

※ 金融庁のリーフレットは、障害年金を補う民間保険として「所得補償保険」と「就業不能保障保険」を並べて挙げてはいますが、両者の違いには触れていません。
生命保険文化センターは所得補償保険に触れておらず、日本損害保険協会は就業不能保険に触れていません。両者の違いに触れている公的な情報源を見つけることができませんでしたので、それぞれの約款でご確認いただくのが確実かと思います。

https://soudanguide.sonpo.or.jp/body/q091.html
(出典:一般社団法人 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問91 所得補償保険は、どのような保険ですか。」)

https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance_leaflet.pdf
(出典:金融庁「公的保険について〜民間保険加入のご検討にあたって〜」2026年8月確認)

※ 恐れ入りますが、筆者自身この所得補償保険については接する機会も少なく、両者を比較した中立的な資料も見つけることができませんでしたので、「どのような場面でどちらが適しているか」を申し上げることは控えさせていただきます。
詳細や体験談などリサーチし、検討の余地のあるのはどのような場面なのかなど、追って執筆させていただければと思います。
ここでは、扱う会社が異なり、要件の呼び方も違うということを知っておいていただければと思います。

短い期間の保障は、公的な給付と重なりやすい

短い継続日数で給付されるものを検討される場合、先に確かめていただきたいのが、ご自身の勤務先の健康保険で何が受けられるかです。

会社員・公務員の方には傷病手当金があります(通算1年6ヶ月・おおむね収入の3分の2)。加入されている健康保険組合や共済組合によっては、付加給付として期間が延びたり、金額が上乗せされたりする場合もあります。

質問④でお伝えした高額療養費制度の付加給付とは別のものです。健康保険組合によっては、この2つがどちらも用意されていることがあります。

ここでお伝えしたいのは、所得補償保険を扱う損害保険会社の業界団体そのものが、「まず公的保障を確認してください」と案内しているということです。

日本損害保険協会の解説には「社会保障制度における休業補償」という項目があり、傷病手当金と労災の休業補償給付に触れたうえで、それでも足りない部分を所得補償保険で補うという順番で説明されています。

商品を売る側の団体でも、順番は「公的保障が先」ということかと思います。

https://soudanguide.sonpo.or.jp/body/q091.html
(出典:一般社団法人 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問91 所得補償保険は、どのような保険ですか。」)

短い期間の保障は、この公的な給付と重なりやすい部分です。

一方で、自営業・フリーランスの方は事情が異なります。国民健康保険の傷病手当金は任意給付で、行うかどうかは加入先の条例や規約の定めによります。重なる相手がないぶん、短い期間の保障を検討する意味は、会社員・公務員の方より大きくなります

まずはご自身の勤務先の健康保険で何が受けられるかを確認し、そのうえで足りない部分を考える、という順番をおすすめします。

精神疾患の扱いは、必ず確認する

精神疾患については、対象外としている商品と、支払い回数や受取期間に制限を設けたうえで対象としている商品の両方があります。損害保険会社が扱う所得補償保険では、精神障害を保険金が支払われない場合として挙げている例もあります。

前半で見たとおり、精神及び行動の障害の平均在院日数は187.1日(35〜64歳)で、がんの10.7日とは桁が違います。
長期にわたって働けなくなる要因として精神疾患の割合は小さくないにもかかわらず、まさにその部分の保障が制限されている、
というのが実情かと思います。

保障が薄くなる理由については、noteでもう少し踏み込んで整理しております。

40代の保険、その保障は本当に必要ですか──薬剤師FPが公的保障と貯蓄で組み立てる、本当に必要な備え

検討してもよいと考えられる場合

就業不能保険を検討する余地がある方

・長く続く障害や要介護の状態に、障害年金の上乗せとして備えておきたい、とご自身で判断された方
自営業・フリーランスの方で、生活防衛費がまだ薄い方。傷病手当金という受け皿がないため、短い継続日数で給付されるタイプを検討する余地があります(会社員・公務員の方は、傷病手当金と重なりやすい部分です)
自営業・フリーランスの方。この保険が効いてくる障害等級1級・2級にあたる状態では、会社員・公務員の方には障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされますが、自営業・フリーランスの方にはこの上乗せがありません。その2階部分にあたる分の備えとして考えていただくと、目的がはっきりするかと思います

※ 3級にあたる状態(労働が著しい制限を受ける状態)には、自営業・フリーランスの方への公的な給付がありません。ただし障害等級1級・2級を給付の要件とする商品では、この状態も対象になりませんので、穴②がここに残る点は変わらないとお考えいただければと思います。

検討される場合は、約款で次の点をご確認いただければと思います。商品による差が大きいところです。

約款で確かめたい3点

精神疾患が支払いの対象かどうか
対象の場合、受取期間などが別扱いになっていないか
「就業不能状態」の定義
入院・在宅療養か、障害等級1級・2級か、要介護2以上か
免責期間と給付までに必要な継続日数
14日・30日・60日・180日以上など

※ 免責期間については、会社員・公務員の方であれば傷病手当金が最長1年6ヶ月ありますので、それほど気にしなくてよい部分かと思います。

こうした構造を踏まえると、就業不能保険は「働けなくなったら必ず出るもの」ではなく、「重い障害や要介護の状態が長く続いたときの上乗せ」と捉えていただくのが妥当かと思います。

貯蓄型・終身の保険|保障と資産形成は分けて考える

前述した内容のとおり、保障と積み立てが一体になった商品は、どこまでが保障の対価なのかが見えにくくなります。

保障は掛け捨てで必要な分だけ、資産形成は純粋な投資商品として運用されているもので、と分けたほうが、それぞれの良し悪しを判断しやすくなるかと思います。

これは保険にかぎった話ではありません。商品やサービスは、あいだに人や会社が入るほど、その分の費用が価格に含まれていきます。保険の場合は、募集や契約の管理、支払いの審査といった仕事がそこにあたります。

どれも必要な仕事ですが、そのぶん、払ったお金のうちご自身に戻ってくる部分は小さくなります。保障と資産形成が1つの商品にまとまっていると、この費用が保障の分なのか、積み立ての分なのかが分からなくなります

お金の増え方が見えにくくなる理由

なぜ増え方が分かりにくいのかというと、払い込んだ保険料の全額が積み立てに回るわけではないためです。

払い込んだ保険料の行き先

保障の対価 → 万一のときの支払いにあてられる部分です(保険の本質的な役割にあたる部分です)
契約や維持にかかる費用 → 保険会社が事業を運営するための費用で、とくに契約したばかりの時期に多く差し引かれる仕組みになっていることが一般的です

払い込んだ保険料からこの2つを差し引いた残りが積み立て運用に回る元手になります。

この構造から、次の2つのことが言えるかと思います。

契約から間もない時期に解約すると、払い込んだ額を下回りやすい
積み立て運用に回る元手が、払い込んだ額より小さくなる。運用の成果が同じであっても、増える元の金額が違えば、戻ってくる額も変わってきます

数字にしてみると、どうなるか

言葉だけでは分かりにくいので、払い込んだ保険料を100として並べてみます。

払い込んだ保険料を100としたとき

払い込んだ保険料        100
- 保障の対価           20
- 契約や維持にかかる費用     60
= 積み立て運用に回る元手   20

※ 20・60は説明のための仮の数字です。実際の割合は商品によって異なります。

お伝えしたいのは割合そのものではなく、運用に回るのは100ではなく、それより小さい数字になるということです。そのため、
同じ利回りで運用されたとしても、契約された方の手元に戻ってくる割合は、そのぶん小さくなりやすいという構造があります。返戻率や利回りが出にくいと言われるのは、この形によるものかと思います。

※ どの程度差し引かれるかは商品ごとに異なり、契約する側から個別に確かめることは難しい部分です。ここは構造としてそうなりやすい、という範囲でお受け取りいただければと思います。

保障と資産形成を分けると、どう変わるか

ここまでの形を、保障と資産形成を分けた場合と並べてみます。

貯蓄型の保険にまとめた場合
「払い込んだ保険料」から、「保障の対価」と「契約や維持にかかる費用」が差し引かれ、残った分が積み立て運用に回ります。
このとき、「保障の対価」と「契約や維持にかかる費用」がそれぞれいくらなのかは、契約する側からは分かりません

保障と資産形成を分けた場合
必要な保障は掛け捨ての保険で用意し、残ったお金をご自身で積み立てます。
掛け捨ての保険料はその商品を販売している保険会社のパンフレットやシミュレーションで確かめられますし、積み立てる金額はご自身で積立額の設定をするため明確かと思います。
なお、積立額と運用利回り、必要になる時期までの年数から見通しを立てられるシミュレーターは、証券会社などが無料で公開しており、ネット検索ですぐに見つかるかと思います。

つまり「いくらを保障に払い、いくらを積み立てに回しているか」が、明白です。
また、ご自身で低コストのものを選択でき、リスク資産をご自身で管理できるメリットもあると言えるかと思います。

どちらの形でも、費用はかかります

なお、分けたほうが必ず増える、というお話ではありません。それは貯蓄型保険の中でおまかせしている運用でも同じことが言えます。

掛け捨ての保険も貯蓄型保険も、取りまとめや支給にかかる作業など基本的な保険業にかかるコストが含まれます
また、ご自身で投資信託などを使って積み立てる場合も、貯蓄型保険の保険会社が投資信託を積み立てる場合も、運用を信託するという投資信託の仕組み上、信託報酬などの費用はかかります
一方で、ご自身で投資信託を積み立てる場合はご自身の労力を割いて投資信託を選び、購入しておりますが、
貯蓄型保険では、投資信託などの選定や売買などの管理をおまかせしている分のコストが追加で発生することになります。

分けた場合の数字と、差が出るのはどこか

こちらも同様に、払い込む金額を100として並べてみます。
保障の中身は同じ(保障の対価 20)とお考えください。

払い込んだ保険料100の内訳

(1) 貯蓄型の保険にまとめた場合

支払った総額100(貯蓄型保険として支払った保険料)

 保障の対価           20 ・・・①
 契約や維持にかかる費用     60
追加コスト含む(投資信託選定・購入の管理)

= 積み立て運用に回る元手   20 ・・・②

 

(2) 保障と資産形成を分けた場合

支払った総額100(同じ100を支払うとして)

 掛け捨て保険として支払った保険料40
(内訳)
  保障の対価           20 ・・・①
契約や維持にかかる費用       20
(投資信託選定・購入はご自身で実施 0)

= ご自身で積み立てに回す額60 ・・・③

※ この数字も説明のための仮のものです。実際の割合は商品によって異なります。

支払った総額が同じ100です。
その中身を覗いていみますと、保障の対価が同じ20ですので、万が一の場合に保障される金額は同額です(①)。
一方で差が出ているのは、資産運用に回す積立額です(②と③)。
投資信託などの選定や売買などの管理をおまかせしている分の追加コストの部分が構造的に響いていることがお分かりいただけるかと思います。

異なるのは、その費用がいくらなのかをご自身で確かめられるかどうか追加コストがあるかどうか資産運用としてのリスク資産をご自身で管理できるかどうかです。

なお、生命保険料控除やNISAなど税制上の扱いも異なり、保険金の支給事由により、金額として結果的に有利だったかどうかは、その方の状況、タイミングによって変わってきますことを申し添えさせていただきます。

「だから損」という話ではありません

保障の対価が引かれるのは、保障がついている以上、当たり前のことです。
保障が必要な方にとっては意味のある商品で、積み立てだけを目的とした手段とは、そもそも目的が違います

分けて考えるのは、どちらが良いかを決めるためではなく、保障として足りているか・増やす手段として納得できるかを、それぞれ別に確かめられる形にしておくためです。

この章の整理

・死亡保険(掛け捨て) → 収入が途切れると生活に困るご家族がいらっしゃる間、必要な額を必要な期間だけ
・民間の医療保険 → 高額療養費制度と生活防衛費で重なる部分が大きく、原則として不要
・がん保険 → 原則として不要。3つの条件に当てはまる場合のみ、検討の対象になります
・就業不能保険 → 給付の要件を先に確認。穴②とずれることがあり、短い期間の保障は傷病手当金と重なりやすい部分です
・貯蓄型・終身 → 保障と資産形成を分けておくと、それぞれの中身を確かめられる形になります

種類ごとに結論が違って見えますが、確かめている軸は同じ3つの穴です。

やめる前に確認したい5つのこと

方向が決まったら、次は進め方です。ここを飛ばすと、かえって損をすることがあります。

①いきなり解約しない

いちばん大事なところです。保険は、健康状態によっては新しく加入できないことがあります。

いま加入されている契約を解約したあとで、「やはり残しておけばよかった」と思っても、同じ条件では入り直せない可能性があります。持病や治療歴がある場合はなおさらです。
また、当初契約時から年齢が上がっているぶん、同じ条件で加入できたとしても保険料は高くなってしまうかと思います。

見直しをされる場合は、新しい契約が成立してから、古い契約を整理するという順番をおすすめします。慎重に進めていただければと思います。

②解約返戻金と、払込満了までの残りを確認する

貯蓄型の契約では、解約する時期によって戻ってくる金額が変わります
前の章でお伝えしたとおり、契約や維持にかかる費用は契約したばかりの時期に多く差し引かれる影響もあり、途中で解約すると、払い込んだ額を下回ることがあります

そのため、払込期間の満了が近い場合は、もう少し続けたほうが結果的に有利になる場合もあります
個人的には、満了まで2〜3年を切っている場合には持ち続けるかと思います。

一方で、まだ満了まで長い期間が残っている場合は、続けることが有利とは限りません。どちらが良いかは、その契約の設計によって変わります。

保険会社に問い合わせれば、現時点で解約した場合の返戻金と、満了まで続けた場合の金額を教えてもらえます。
この2つの数字は、ご自身の契約の設計書や契約内容を見ないと分かりません。数字を取り寄せてから判断していただければと思います。

③「やめる」以外の選択肢を知っておく

全部やめるか、そのまま続けるかの二択ではありません。

やめる以外の選択肢(基本的には以下の2つになるかと思います。)

減額 → 保障額を下げて、その分だけ保険料を減らします
特約だけ外す → 主契約は残したまま、不要な特約を解約します

※ なお、貯蓄型の見直しを相談した際に提案されることの多い払済保険については、下記の『払済保険を選ぶ前に確かめたい2点』をご確認いただければと思います。
(払済保険 → 保険料の払い込みをやめ、そのときの解約返戻金をもとに、保障額を下げた契約として残します)

どれを選ぶかは、その保障が何のためのもので、いくら必要なのかから考えていただくと、決めやすくなるかと思います。

目的そのものがなくなった場合(お子さんが独立された、住宅ローンが団体信用生命保険で消えたなど) → やめる、または特約を外す
目的は残っているが、必要な額が下がった場合(お子さんの独立まであと数年になった、貯蓄が増えたなど) → 減額

前の章の5つの質問で確かめた3つの穴が、そのまま「いまの目的」と「いまの必要額」にあたります。そこに照らして、残す部分と減らす部分を決めていただければと思います。

さて、払済保険についてですが、確かめていただきたい点のある選択肢です。貯蓄型の見直しを相談した際に提案されることがありますので、中身を知っておいていただければと思います。

払済保険を選ぶ前に確かめたい2点

保障額がさらに下がります
もともと保障額が足りていない契約でこれを選ぶと、保障としては働きにくい状態のまま、契約だけが残ることになります。下がったあとの金額を必ずご確認ください。

・契約が続く以上、費用もあらかじめ支払っていることになります
払済保険は、そのときの解約返戻金を「一時払いの保険料」として払い直し、保障額を下げた新たな契約を結ぶという形です。
契約を維持するための費用は、その一時払いの保険料の中に、あらかじめ含まれています。払い込みが止まるだけで、「払わなくてよくなる」=「費用がかからなくなる」ではありません。

この2つを確かめたうえで、それでも保障を残したいのかどうか。残す理由が見当たらないのであれば、減額や特約の解除のほうが目的に合いやすいかと思います。

取り扱いは契約内容によって異なりますので、保険会社にご確認いただければと思います。

④ほかの保障と重なっていないか確認する

すでに持っている保障を数え忘れていることがあります。

・住宅ローンの団体信用生命保険
・勤務先の団体保険や、労働組合の共済
・共済(都道府県民共済・こくみん共済など)

これらを足したうえで、それでも足りない部分だけを民間保険で埋める、という順番になります。

⑤判断に迷うときの相談先

ご自身だけでの判断が難しい場合、相談先の選び方が重要になります。前半でお伝えしたとおり、無料の保険相談は、加入があってはじめて収益が生まれる構造になっていることが一般的です。

商品を販売しない立場の相談先としては、次の2つが分かりやすいかと思います。

商品を販売しない相談先

日本FP協会「自分にあったFPを探す」
専門分野・所在地・相談料金・保有資格などの条件でファイナンシャル・プランナーを検索できます

https://www.jafp.or.jp/confer/
(出典:日本FP協会「FPに相談する」)

J-FLEC(金融経済教育推進機構)
金融庁が所管する認可法人で、「特定の金融商品の勧誘は一切いたしません」と明示されています。一定の基準を満たした「J-FLEC認定アドバイザー」を検索できるほか、個別相談の仕組みも用意されています

https://www.j-flec.go.jp/
(出典:金融経済教育推進機構(J-FLEC))

相談される際は、「商品を提案してもらう場」ではなく「ご自身の判断を確かめる場」と位置づけていただくと、有意義な時間になりやすいかと思います。

相談にあたっては、家計の収支・貯蓄額・すでに加入されている保険証券・ねんきん定期便・勤務先の付加給付の有無をそろえておくと、話が早く進みます。

保険料が減ったら、その分を何に回すか

最後に、浮いたお金の使い道について少しだけ触れさせていただきます。

公益財団法人 生命保険文化センターの調査では、年間に払い込む生命保険料は2人以上の世帯で平均35.3万円、個人では男性19.6万円・女性15.4万円とされています。

https://www.jili.or.jp/research/report/9849.html
(出典:公益財団法人 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」)

保険は「病気になったあとのお金」を用意するものです。一方で、病気を早く見つけて被害そのものを小さくするという方向にも、お金の使い道があります。

市区町村が実施しているがん検診は公費の補助があり、実際に2つの自治体の金額を確認したところ、40代の方が対象となる検診をひととおり受けても、年に0円〜1,000円台という水準でした。年間の保険料と比べると、桁が違うところかと思います。

検診の考え方については、noteで詳しくお伝えしております。

自治体のがん検診は、迷わず全部受ける。そのうえで私がもうひとつ考えていること

もちろん、浮いた分を貯蓄や資産形成にあてるのも、人生を豊かにするための時間やご家族との経験にあてるのも、どちらも立派な選択かと思います。大切なのは、よく分からないまま払い続けている状態から抜け出すことではないでしょうか。

まとめ|「いらない」かどうかは、穴があるかどうかで決まります

ここまで、「生命保険はいらない」と言われる根拠から、ご自身で判断するための軸までを整理してきました。最後に要点をまとめます。

この記事の要点

「いらない」と言われる4つの理由
・公的保障が手厚い/保険は確率が低く損失が大きいことにだけ使う手段/貯蓄型は判断しづらい/売る側と買う側で情報に差がある
これらは「入りすぎていないかを疑う理由」であって、「やめてよい理由」そのものではありません

公的保障が届く範囲
・医療費
→ 医療費100万円でひと月約9.3万円。8月から翌年7月までで53万円で頭打ち(年収約370〜770万円の場合)
・働けないとき(仕事以外の原因)
→ 会社員・公務員は傷病手当金がおよそ3分の2で最長1年6ヶ月。自営業・フリーランスの方にはこの受け皿がありません
・働けないとき(仕事中・通勤中)
→ 労災保険でおよそ80%(公務員の方は公務災害補償で同じ水準)。自営業・フリーランスの方も特別加入が可能。1年6ヶ月を過ぎたあとは、どちらも傷病補償年金へ引き継がれます
・障害・死亡
→ 障害年金・遺族年金。会社員・公務員と自営業では、届く高さが違います
・失業したとき
→ 雇用保険の失業給付(基本手当)。働ける状態にあることが前提で、病気で働けない間の受け皿ではありません

公的保障で埋まらない3つの穴
・穴① 遺されたご家族の生活費
・穴② 働けない状態が続き、障害等級に該当しなかったとき
・穴③ 公的医療保険の対象外になる出費(先進医療・患者申出療養・自由診療を除けば、多くは貯蓄の範囲)

ご自身にあてはめる5つの質問
・①収入が途切れて困る方がいるか ②働き方 ③生活防衛費 ④付加給付 ⑤団体信用生命保険

種類別の結論
・死亡保険(掛け捨て) → 穴①がある方には、残す価値が高いことが多い
・民間の医療保険・がん保険 → 原則として不要。がん保険は3つの条件に当てはまる場合のみ
・就業不能保険 → 重い障害や要介護が長く続いたときの上乗せ。短い継続日数のものもありますが、傷病手当金と重なりやすい部分です
・貯蓄型・終身 → 保障と資産形成は分けたほうが、それぞれの中身を確かめやすくなります

やめる前に確認したい5つのこと
・①いきなり解約しない ②解約返戻金と払込満了 ③減額・特約解除という選択肢 ④ほかの保障との重複 ⑤商品を販売しない相談先

生命保険は、公的保障と貯蓄では埋まらない穴にだけ使う手段です。その穴がご自身にあるかどうかで、いる・いらないが決まります。

「みんなが入っているから」でも「ネットでいらないと書かれていたから」でもなく、ご自身の状況を数字で確かめたうえで判断していただければ、この記事の役割は果たせたのではないかと思います。

必要な保障額を概算するためのお手伝いツール

保険必要額シミュレーター(無料・登録不要)

この記事でお伝えした考え方を、実際の数字にしてみたい方のために、私が個人で作成した無料ツールをご用意しております。年齢・家族構成・毎月の生活費など7項目を入力いただくと、死亡リスクと、介護・障害リスクを分けて、それぞれ「毎月の不足額」「必要保障額」「足りるかどうかの目安」を概算できます。

入力いただいた内容はサーバーには送信されず、ブラウザの中だけで処理されます。特定の保険商品をおすすめするものではありません。

https://hoken-need-sim.gue-lab.workers.dev

あわせてお読みいただきたい記事

ここまで長文を読んでくださり、ありがとうございました。

これからも皆さんの日々の生活が『より良く』なるような情報を発信していきます。

以上、ぐぅでした。

※本記事の画像はAI生成です。

本記事に関する免責事項

本記事は、公的機関の公開情報をもとに、保険・家計に関する一般的な情報をお伝えすることを目的としており、特定商品の勧誘や個別の助言を目的とするものではありません。また、特定の契約の解約をおすすめするものでもありません。個別のご判断にあたっては、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士、税理士等の有資格専門家にご相談ください。記事内容を根拠とした自己判断による契約・解約等で生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねますのでご容赦ください。

本記事の医療・健康に関する記述も、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の症状・疾患の診断・治療・予防を目的とするものではありません。個別の健康課題については、医師・薬剤師等の医療専門家にご相談ください。

本文でご紹介した制度の内容および金額は執筆時点のものです。高額療養費制度は2026年8月に改定され、2027年8月にも見直しが予定されています。公的年金の額は年度ごとに改定されますので、最新の内容は各制度の公式情報をご確認ください。

ABOUT ME
ぐぅ
1993年1月生まれ 酉年 やぎ座 O型 神奈川県出身 妻と子2人との4人暮らしで山梨県在住の34歳です。 国立大学薬学部の研究室では医薬品候補化合物の体内動態分析に関わり、 現在は薬剤師として医薬品卸売販売業(営業所管理者)に携わっています。 マネーリテラシ―中心に勉強に励んでいます。 身近に関わっている家族や友人の今の生活が少しでも良くなっていけるような情報を発信していきたいと思い、ブログを開設しました。 皆さんの生活も少しでもより良くしていただけるべく、役に立つ情報を多面的に発信していきたいと思います。